2018 年 31 巻 2 号 p. 96-108
慢性糸球体腎炎としては,IgA 腎症の頻度が最も高く,その他,紫斑病性腎炎,巣状糸球体腎炎や膜性増殖性糸球体腎炎などが挙げられる。免疫原性腎炎では,免疫複合体が糸球体に沈着することで補体やマクロファージが活性化し,メサンギウム細胞の形質転換,さらに上皮・内皮細胞障害を介した凝固異常が惹起され炎症のpathwayが進展する。これらの制御には,ステロイド剤,免疫抑制剤やRAS 系の阻害薬による多剤併用療法が用いられ,重症例では血漿交換やLDL アフェレーシスなどが施行される。一方,典型的溶血性尿毒症症候群 (典型的HUS) は,腸管出血性大腸菌感染に起因して発症し,溶血性貧血,血小板減少,急性腎不全を3 主徴とする疾患である。私たちは,典型的HUS の発症病態を明らかにするためにHUS マウスモデルを作製し,このモデルを使用して腎障害からの回復機序や腎再生因子およびHUS の制御に関する新たな知見を得た。