日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
Print ISSN : 0915-2245
ISSN-L : 0915-2245
症例報告
母親に体細胞モザイクや生殖細胞系列モザイク変異を有することが疑われたX連鎖型Alport症候群の男児例
鈴木 恭子山田 拓司
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 36 巻 p. 27-32

詳細
抄録

Alport症候群は,IV型コラーゲン異常による進行性腎障害や感音性難聴,眼科的異常を伴う遺伝性疾患である.症例は2歳男児で,発熱後の肉眼的血尿と持続する尿異常のため腎生検を施行し,光顕所見や蛍光抗体法,IV型コラーゲン染色の検査結果から,X連鎖型Alport症候群と診断した.児の遺伝子解析では,COL4A5エクソン49にヘミ接合体遺伝子変異が同定された.家系内に腎不全患者は存在せず,一見新生突然変異で矛盾がなかったが,母親に数年来の顕微鏡的血尿があることや,そのサンガーシークエンスの波形で児と同様の1塩基欠失がある可能性が示唆されたことから,母親に体細胞モザイクや生殖細胞系列モザイクを有することを疑った.臨床経過から弟の発症は否定的だったが,生殖細胞系列モザイクの存在はさらなる次子へ遺伝する可能性があり,また体細胞モザイクは患者本人の症状にも関与するため,慎重で丁寧な遺伝カウンセリングが重要となる.

著者関連情報
© 2023 一般社団法人日本小児腎臓病学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top