日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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36 巻
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総説
  • 石原 正行
    2023 年36 巻 p. 81-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/06
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    急性のカルシウム,リン,およびマグネシウムの異常に遭遇する機会は多くはない.このため,急性期に用いられる注射薬を投与する頻度も少ない.しかし,これらに関する正確な知識がなければ,適切な治療を行うことができない.本稿では,急性期の電解質異常の重症度による症状の違い,電解質異常の原因,無症候性の場合においても治療介入の必要なタイミング,および注射薬を投与する際の注意事項をまとめた.さまざまな疾患に対する治療薬の増加や新たな病態の解明により,電解質異常に遭遇する機会が増えており,これらの知識はすべての臨床医にとって大切である.また,治療とあわせて可能な限り病態評価のための検体採取をすることが望ましい.

原著
  • 椙本 興平, 北山 浩嗣, 深山 雄大, 山田 昌由, 中島 三花, 芹澤 龍太郎
    2023 年36 巻 p. 21-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景】C3腎症はエビデンスのある治療法はない.【方法】当院で2011年1月1日から2021年9月30日までの間で診断したC3腎症症例10例を対象とし,C3腎症に対する治療内容と効果を検証した.【結果】C3腎症10例のうち,9例でステロイドパルスとミゾリビン(MZR),1例はプレドニゾロン(PSL)単剤で初期治療を行い,入院時の尿蛋白クレアチニン比(UP/C)は中央値1.34 g/g・Cre,初期治療開始1か月後は0.42 g/g・Creに減少した.その後6例がMZRからシクロスポリン(CyA)の追加または変更になった.CyA開始から半年以上経過した4例のUP/Cは,中央値0.92 g/g・Creから0.13 g/g・Creに減少した.【結論】初期治療として,ステロイドとMZRを含む多剤併用療法が奏功した.治療効果が不十分な場合,CyAへの変更か追加が選択肢として有用と考えられた.

  • 長谷 幸治, 林 正俊, 井上 哲志, 上田 晴雄, 戒能 幸一
    2023 年36 巻 p. 113-119
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/18
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    小児の進行した慢性腎臓病(CKD)の多くが非糸球体性疾患で占められ,その発見は学校検尿では困難である.2020年より愛媛県宇和島市では,小学4年の小児生活習慣病予防健診に血清クレアチニン(血清Cr)の測定が追加され,血清Crに基づいた推算糸球体濾過量(Cr-eGFR)による小児CKDスクリーニングが行われている.同様に2022年に大洲市でも小学4年と中学1年を対象に開始された.これまで合わせて小学4年1,900名,中学1年352名がスクリーングされている.Cr-eGFRが,小学4年は90 mL/min/1.73 m2未満,中学1年は85未満を陽性基準とし,各々125名と19名が要精密検査とされ,うち85名と11名が当科を受診している.結果,CKD stage 2以上が5名,CKD stage 3の常染色体潜性多発性囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease: ARPKD)が1名発見された.一般小児人口におけるCKDの潜在的な有病率と小児生活習慣病予防健診における血清Cr測定の有効性が示された.

症例報告
  • 石丸 愛, 内村 暢, 只木 弘美, 白井 綾乃, 加藤 愛美, 神山 裕二, 伊波 勇輝, 髙橋 英里佳, 矢内 貴憲, 本井 宏尚, 塩 ...
    2023 年36 巻 p. 1-7
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/25
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    症例は14歳男児.間欠熱を主訴に受診.熱源精査のため頭部~骨盤造影CTを施行したところ,両側腎臓に多発する造影不領域を認め,間質性腎炎を疑い鑑別を進めた.67Gaシンチグラムにて腎臓の結節性の異常集積を認めたため,サルコイドーシスを疑った.自然に解熱したがCre 1.65 mg/dLと急性腎機能障害を認めたため腎生検を施行し,非乾酪性の肉芽腫性尿細管間質性腎炎の所見を認め,サルコイドーシスと診断した.ステロイドとミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil: MMF)の治療により速やかに腎機能は改善し,寛解を維持した.本症例のように,腎サルコイドーシスにより腎機能障害を認める場合には,線維化による腎機能障害が不可逆的となる前に早期に治療介入することが重要である.また,MMFが小児の腎サルコイドーシスにおいてもステロイド漸減中の再発予防に有用な可能性がある.

  • 平沢 光明, 元吉 八重子, 小野 静香, 北川 達士, 横田 俊介, 亀井 宏一, 横井 匡, 古川 晋, 山口 明日香, 宮田 理英, ...
    2023 年36 巻 p. 9-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/02
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    小児ネフローゼ症候群の治療に用いられるステロイド薬には,複数の副作用があり,緑内障はその一つである.しかし,ステロイド緑内障は点眼薬による治療で改善することも多く,手術まで要する症例は少ない.我々は,初発のネフローゼ症候群に対してステロイド治療開始後早期に眼圧上昇を認め,両眼に線維柱帯切開術を施行するも,ネフローゼ症候群再発の際にもステロイド治療に伴い,眼圧上昇を認めた症例を経験した.本症例は,一般的なステロイドレスポンダーの要素に加え,隅角形成不全も伴っていた.そのことによりステロイド治療開始早期に急激な眼圧上昇を来し,緊急の緑内障手術が必要になったと思われる.ステロイド治療による緑内障の発症は,本症例のように急速かつ重度な経過をたどる可能性もあるため,ステロイド使用時には可及的速やかな眼圧の確認・管理が重要である.

  • 鈴木 恭子, 山田 拓司
    2023 年36 巻 p. 27-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/13
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    Alport症候群は,IV型コラーゲン異常による進行性腎障害や感音性難聴,眼科的異常を伴う遺伝性疾患である.症例は2歳男児で,発熱後の肉眼的血尿と持続する尿異常のため腎生検を施行し,光顕所見や蛍光抗体法,IV型コラーゲン染色の検査結果から,X連鎖型Alport症候群と診断した.児の遺伝子解析では,COL4A5エクソン49にヘミ接合体遺伝子変異が同定された.家系内に腎不全患者は存在せず,一見新生突然変異で矛盾がなかったが,母親に数年来の顕微鏡的血尿があることや,そのサンガーシークエンスの波形で児と同様の1塩基欠失がある可能性が示唆されたことから,母親に体細胞モザイクや生殖細胞系列モザイクを有することを疑った.臨床経過から弟の発症は否定的だったが,生殖細胞系列モザイクの存在はさらなる次子へ遺伝する可能性があり,また体細胞モザイクは患者本人の症状にも関与するため,慎重で丁寧な遺伝カウンセリングが重要となる.

  • 坂口 真弓, 木村 昂一郎, 吉野 豪, 萩元 慎二, 倉信 裕樹, 堂本 友恒, 戸川 雅美, 田村 明子, 宇都宮 靖, 圓山 由香
    2023 年36 巻 p. 33-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は尿路感染症の既往のない6歳女児.発熱と腹痛を主訴に受診した.生活歴の問診から,トイレ排尿に失敗した際に父親から叱責された後,排泄習慣に複数の問題が出現したことが判明した.入院時の尿培養検査では菌量が少なく結果としては陰性であったが,問診から尿路感染症を最も疑った.造影CT検査から急性巣状性細菌性腎炎,腎膿瘍と診断した.脊椎MRIに神経学的異常所見がなく,Hinman-Allen症候群が基礎疾患であると考えた.内服治療などが検討されることもあるが,本児は排尿指導のみで排泄習慣が改善し,現在まで尿路感染症の再発なく経過している.器質的疾患以外を背景として腎膿瘍を発症することはまれであり,学童期の初発の尿路感染症では排泄習慣の問診を行う必要がある.また,排尿指導内容についての詳細な報告は乏しい.本症候群は排尿指導で尿路感染症の再発なく治癒する可能性があるため,実際の指導内容とともに報告する.

  • Aki Tabata, Hiroki Yabe, Yuya Mitake, Tomohiro Shirai, Ken Kawamura
    2023 年36 巻 p. 41-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/26
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    Exercise therapy for pediatric patients with active IgA nephropathy is necessary to improve physical mobility functioning and maintaining a normal daily and school-life, whilst managing the risk of further relapse; although, this has not been investigated yet. This case report aimed to evaluate the influence of exercise therapy in a pediatric patient with active IgA nephropathy whilst being treated in-hospital with a multiple-drug combination therapy. The patient was an 18-year-old girl diagnosed with IgA nephropathy a year prior to her admission at the hospital for multiple-drug combination therapy. Moderate-intensity exercise therapy was started on the 8th day and continued until the 31st day, at discharge. The results of her physical functioning on the 8th and 30th day were grip strength from 21.1 kg to 21.0 kg, knee extension strength from 0.59 kgf/kg to 0.74 kgf/kg, skeletal muscle mass index from 7.2 kg/m2 to 6.7 kg/m2, 6-minute walk test from 570 m to 590 m, and peak work rate from 100 watts to 110 watts. Muscle strength and exercise tolerance were maintained, or improved. The urine protein/creatinine ratio (UP/Cr) from the 8th day to discharge decreased from 0.4 g/gCr to 0.2 g/gCr. There was no recurrence of IgA nephropathy during hospitalization. Exercise therapy during hospitalization in a pediatric patient with active IgA nephropathy may not have adverse effects, and may prevent a decline in physical function and exercise tolerance.

  • 三浦 和樹, 南 裕佳, 篠塚 俊介, 秋草 文四郎, 平本 龍吾
    2023 年36 巻 p. 55-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル オープンアクセス

    原発性シェーグレン症候群を背景とした重症尿細管間質性腎炎に耐糖能異常を合併した14歳女児.初診時HbA1c 6.4%, HOMA-IR (homeostatic model assessment for insulin resistance) 3.4とインスリン抵抗性(insulin resistance: IR)が増大していた.原疾患に対する治療としては標準的にステロイド治療を選択したが,一方で耐糖能異常の増悪が懸念された.しかし実際にはステロイドパルス療法を含めた免疫抑制治療により,原疾患とともに耐糖能異常は速やかに改善した.慢性腎臓病,間質性腎炎を主座として,尿細管におけるインスリン受容体の発現低下や,慢性炎症に伴うインスリン抵抗性増大が経過に関与していたと考えられた.本症例のように腎疾患に合併した耐糖能異常の場合,原疾患に対する治療により耐糖能異常の改善が期待できる.

  • 小野 敦史, 前田 亮, 陶山 和秀, 細矢 光亮, 藤丸 拓也, 森 崇寧, 蘇原 映誠, 内田 信一
    2023 年36 巻 p. 61-66
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/09
    ジャーナル オープンアクセス

    結節性硬化症(TSC)に多発性囊胞腎(PKD)を合併する症例(TSC-PKD)の中で,腎予後の不良な TSC2/ PKD1隣接遺伝子症候群の解析は進んでいるが, PKD遺伝子の異常がない症例については不明な点が多い.症例は13歳女児.結節性硬化症の合併症検索中に両側多発性囊胞腎が見つかった. TSC2/ PKD1隣接遺伝子症候群を疑って遺伝子検査を行ったが, TSC2遺伝子と PKD1遺伝子, PKD2遺伝子に異常はなかった.著明な囊胞を持つTSC-PKDでも PKD1PKD2遺伝子に異常を認めなかったことから, PKD1遺伝子と PKD2遺伝子の異常以外にもPKD発症に関与する因子が存在する可能性が示唆された.さらなる病態解明のため, PKD遺伝子異常のないTSC-PKDの集積と解析が必要である.

  • 長谷川 智大, 奥村 保子, 近藤 秀仁, 松田 翔平, 面田 恵, 西田 眞佐志
    2023 年36 巻 p. 75-80
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    バラシクロビル(valacyclovir: VACV)は,アシクロビル(acyclovir: ACV)のプロドラッグで,小児での腎障害の報告は稀である.症例は14歳女児,帯状疱疹の診断で前医にてVACV 3,000 mg/日を処方された.内服3日後から嘔吐し,頸部痛・頭痛・背部痛を訴え,内服7日目に全身浮腫が出現した.同日,前医血液検査で腎障害を認め入院となったが,乏尿が持続し翌日当院へ転院した.VACVによる薬剤性腎障害を疑い,血中ACV除去目的に入院5日目,7日目に血液透析を実施した.入院10日目の腎生検で,糸球体・間質に炎症細胞浸潤や結晶形成は認めず,広範囲に尿細管壊死を呈しており,VACVによる中毒性腎障害を考えた.後日,内服7日目の保存血清を用い血中ACV濃度を測定すると,10.69 µg/mL(至適治療濃度:0.8–1.6 µg/mL)と異常高値であった.VACVは正常腎機能の小児に対する常用量投与でも腎障害を来しうるため,患者に処方する際に副作用や飲水量について適切な指導を行い,予防・早期発見に努める必要がある.

  • 神保 智里, 南 裕佳, 大林 浩明, 篠塚 俊介, 森 雅人, 秋草 文四郎, 平本 龍吾
    2023 年36 巻 p. 105-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/06
    ジャーナル オープンアクセス

    急性尿細管間質性腎炎(ATIN)の原因薬剤として,数々の抗菌薬が知られているが,今回我々は,報告が非常に稀であるホスホマイシン(FOM)によるATINの1例を経験した.症例は生来健康な3歳男児.発熱と下痢を主訴に近医を受診し,急性腸炎の診断でFOMを処方された.FOM内服中に紅斑が出現したため,トスフロキサシン(TFLX)に変更されたが,嘔吐,活気低下が続き,前医を受診した.前医で輸液後も反応尿に乏しく,腎機能の悪化を認め,当院に紹介となった.尿中β2MGが著明高値であり,腎生検を施行してATINと診断した.発症8週後の薬剤リンパ球刺激試験(DLST)でFOMとTFLXが陽性,1年後の再検ではFOMのみが陽性となり,臨床経過と併せてFOMによる薬剤性ATINの診断とした.FOMによるATINは非常に稀であり,本症例では,遠隔期の2回目のDLSTが被疑薬の同定に有用であったため報告する.

第58回日本小児腎臓病学会学術集会 森田賞 受賞論文紹介
第58回日本小児腎臓病学会学術集会 優秀演題奨励賞 受賞演題紹介
二次抄録
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