1992 年 5 巻 1 号 p. 89-93
神経因性膀胱児における腎障害の程度を知るため,脊髄髄膜瘤および鎖肛の術後などで神経因性膀胱を来した9例を対象とし,尿中微量アルブミンおよび尿中NAGを検討した。9例のうち3例は腎の形態異常や膀胱尿管逆流現象 (VUR) を認めた。しかし,全例血清クレアチニン値は正常であった。3才児検尿にて異常を認めない54名の尿をコントロール群とした。その結果,神経因性膀胱児 (非膿尿時) のアルブミン指数,NAG活性はコントロール群に比し有意に高値を示した。このうち,腎形態異常やVURの認められた3例ではアルブミン指数,NAG活性両方ともが,その他の6例ではNAG活性が,コントロール群に比し有意に高値であった。以上より,明らかなVURが認められず,上部尿路に直接侵襲の認められない神経因性膀胱児においても腎尿細管障害の存在が示唆された。さらに,腎糸球体障害はVURなどの合併によって出現する可能性が考えられた。