システム農学
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研究論文
市場経済導入初期における中国国内人口移動の空間分布及び要因分析
劉 晨王 勤学一ノ瀬 俊明大坪 国順
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2005 年 21 巻 1 号 p. 33-46

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抄録

本研究では人口移動の全体像を把握するための最初の一歩として、現時点で唯一利用可能となる1990人口センサスの1%オリジナルデータに基づき、市場経済導入初期の1985-1990年における人口移動について、県レベルでの空間分布及び要因分析を行った。その結果、以下の事実が明らかとなった。①高い経済発展を遂げた直轄市の市区、各省の省都や改革・開放が進んだ珠江デルタ地域が周辺農村地域の人口を吸収していた、②省内移動は省間移動より多く、総移動者数の7割弱を占めた。省内移動の目的地は主に各省の省都、大都市、改革・開放が進んだ地域、鉱区などであり、省間移動の目的地は主に北京市、天津市、上海市の市区及び付近地域、珠江デルタ地域であった、③非戸籍移動(戸籍を移さない転居)者数は戸籍移動(戸籍の移動を伴う転居)者数より少ないものの、移動者数の半数弱を占めた。非戸籍移動の約8割は農村部からの転出であったが、戸籍移動の約半数は都市部からの転出であった。戸籍移動者の約7割は大学や専門学校へ進学する学生や上級行政単位への転勤者、就職者及びその親族の随伴移動であったが、非戸籍移動者の半数は出稼ぎのため、経済発展の高い地域、あるいは経済発展見込みの高い地域で紡織業や加工業などの工業に従事する者であった、④統計解析の結果は、諸社会・経済指標のうち地域の経済規模が総流入数と最も高い相関を示しており、経済力が人々を引き付ける最も重要な要因となっていた。また、省間戸籍移動は経済規模と、省間非戸籍移動は経済規模の他に海外投資と、省内非戸籍移動は生活水準及び産業の構成と有意な相関があった、⑤全国の県に対して流入数と県内GDPの回帰分析を行い、中国全県に対する流入数を推測する式を提案した。

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© 2005 システム農学会
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