日本小児呼吸器疾患学会雑誌
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H. influenzaeのampicillin感受性の年次別推移とampicillinに対する最小発育阻止濃度 (MIC) 2μg/mlH.influenzaeによる気管支肺感染症のペニシリン系抗菌薬の治療効果について
黒崎 知道太田 文夫玉井 和人星岡 明高橋 良仁小俣 卓中田 慎一郎牧野 巧上原 すゞ子
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2001 年 12 巻 1 号 p. 18-23

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抄録
洗浄喀痰培養を用い, 微量液体希釈法にてampicillin (ABPC) に対する最小発育阻止濃度 (ABPC-MIC) 2/μg/mlでβ-ラクタマーゼ陰性のHaemophilus influenzae (以下H. inf) による気管支肺感染症と診断された43例のペニシリン系抗菌薬の治療効果について検討した。
中間型感受性であるABPC-MIC2μg/mlの分離率は, 1991年0%, 1993年5.5%, 1995年10.8%, 1998年13.1%, 2000年15.3%と漸増し, H. infのABPC感受性の低下傾向が認められた。4μg/ml以上でβ-ラクタマーゼ陰性ABPC耐性H. inf (BLNAR) は, 1993年に1株 (1.1%), 1995年に2株 (1.7%) 分離されていた。しかし, 今回の検討結果より中間型感受性であるABPC-MIC2μg/mlH. infによる小児気管支肺感染症の治療には, 通常使用量のamoxicillin (AMPC) 内服 (29.8±4.2mg/kg/日), ABPC静注 (100.8±4.9mg/kg/日) で全例著効~有効であり, 臨床的には耐性と判定し難い。
最近のH.infに対するABPCの感受性低下傾向およびBLNARの増加傾向は経ロセフェムの繁用によるとされている。気道移行が充分でない経ロセフェム系と異なりH. infのペニシリン結合蛋白の変異を来し難いペニシリン系抗菌薬で治療を行うことは, 菌の新たな耐性を誘導し難いことに繋がると考える。BLNARの動向に注意しつつ, 耐性菌の出現しにくい適切な抗菌薬療法を心がける必要がある。
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