生理心理学と精神生理学
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原著
緩徐なペース呼吸がガス代謝に及ぼす影響
寺井 堅祐 梅沢 章男
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2015 年 33 巻 3 号 p. 205-214

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抄録

呼吸セルフコントロールは幅広く使われているリラクセーション技法であるが,臨床効果が生まれる機序については未知な部分が多い。そこで本研究は,ペース呼吸(PB)が呼吸系に与える影響を明らかにすることを目的とした。健常な男女10名は,20分の安静に続き,12 cpmから2 cpmまで段階的に呼吸を遅くするPB条件に参加した。その結果以下の諸点が明らかにされた。1)実験参加者は呼吸数(RR)を段階的に落とすことに成功した(p<.05)。2)呼気終末炭酸ガス分圧(PetCO2)はPBを通じて維持されていたが,RRの恒常誤差と変動係数は2 cpmで明らかな増加を示した(p<.05)。3)分時換気量(V·E),炭酸ガス排出量(V·CO2),炭酸ガス換気当量(V·E/V·CO2)が2 cpmにおいて有意に減少したことから(p<.05),ガス交換が効率化したことが示唆された。4)心拍変動の総パワー及び圧受容体反射感度は4 cpmで最大値を示した。以上の結果から,呼吸セルフコントロールは,呼吸困難感のような呼吸感覚に影響を及ぼすことと,動脈血中炭酸ガスには影響しないことが示唆された。

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© 2015 日本生理心理学会
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