生理心理学と精神生理学
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原著
外因性のK複合波出現時における事象関連電位波形と機能に関する検討
沖本 一哉小川 景子
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2021 年 39 巻 1 号 p. 65-78

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抄録

睡眠段階2に特有のK複合波は覚醒誘発機能と睡眠保護機能の両方の役割を担うことが報告されているが,機能について未だ議論中である。外因性のK複合波出現時の事象関連電位(evet-related potential: ERP)は二峰性(N300-P400-N550-P900)または一峰性(N300-P900またはN550-P900)の形態を示し,K複合波の機能と関連する。先行研究より,この形態の違いに関してP400の関与が指摘されている。P400は外界の刺激に対する情報処理過程を反映し,眠りが深くなると振幅が減衰または消失する。本研究では聴覚刺激呈示による外因性のK複合波出現時のERP波形と機能について,1周期目の睡眠段階2を前半区間と後半区間に分け比較した。検討の結果,P400振幅は前半区間よりも後半区間で減衰した。それにしたがって,前半区間ではK複合波は二峰性(N300-P400-N550-P900)のERP波形が出現したのに対して,後半区間では一峰性(N300-P900)であった。本研究結果より,K複合波の機能について,前半区間では覚醒誘発機能が,後半区間では睡眠保護機能がそれぞれ優勢に働く可能性を示した。

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© 2021 日本生理心理学会
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