抄録
12名の成人から, 聴覚刺激を選択的に聴取している事態, および無視している事態での事象関連電位 (ERP) を記録した.ピッチの異なる両耳分離聴覚刺激と, 色および呈示時間の異なる視覚刺激とを短い刺激間間隔 (ISI, 200-500ms) あるいは長い刺激間間隔 (600-1500ms) で呈示した.聴覚刺激および視覚刺激は, 時間的関係をもたないように呈示した.被験者には, 一方の耳に注意を向け, 標準刺激よりもピッチの高い標的刺激を検出すること, あるいは視覚刺激に注意を向け, 全ての聴覚刺激を無視することを求めた.その結果, 視覚刺激注意条件における聴覚ERPに比べて, 聴覚刺激注意条件における非関連刺激ERPには, 両ISI条件で類似した陽性シフトが200-300ms潜時帯でみられた.このことは, 非関連刺激ERPにおける陽性シフトが, 先行刺激に対するERPの重畳によるものではなく, 非関連刺激の排除と関連した内因性陽性電位であることを示唆する