抄録
ヒトの終夜睡眠における行動的覚醒 (左右のボタン押し) を指標として, 大脳半球間の機能水準の非対称性を調べた.被験者の両手に押しボタンを装着し, 睡眠途中に覚醒したとき両手のボタンを同時に3回押すよう要請した.2名の男子学生が合計34夜非連続に実験室で終夜睡眠した.その結果, ボタン押し数の左右差はREM睡眠から生じた事象に比べ, NREM睡眠からの事象に顕著であった.この結果はREM睡眠時に特異的に右半球が活性化し, NREM睡眠時に特異的に左半球が活性化するという見解を支持しない.むしろREM睡眠時に半球間の活動は相対的に対称であり, NREM睡眠において非対称性が出現するという見解を支持する.