抄録
症例の概要 : 患者は上顎左側歯肉癌により上顎骨切除術を施行された75歳の女性. 治療用顎義歯を製作し, 創部の状態に合わせ調整を繰り返した後, 組織の安定を待ってから最終顎義歯へ移行した.
考察 : 治療用顎義歯の栓塞子の形態として開口量が少なかったこと, 装着時および装着後の調整のしやすさを考慮し, 治療用顎義歯の栓塞子部は天蓋開放型を選択した. その後患者の訴えを考慮しながら栓塞子の形態を調整し, 最終顎義歯では, 中空型で天蓋閉鎖型栓塞子にしたところ, 患者の満足を得られることができた.
結論 : 栓塞子の形態は術後の創部の状態や開口量などの条件に左右され, それらの条件に合わせた形態の選択が重要と考えられた.