心理学研究
Online ISSN : 1884-1082
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ISSN-L : 0021-5236
原著論文
ダークトライアドは社会的排斥を媒介して恋人や配偶者への心理的暴力加害を予測する
金政 祐司, 古村 健太郎, 宮川 裕基
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電子付録

2026 年 97 巻 2 号 p. 70-81

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Translated Abstract

The Dark Triad is widely associated with antisocial behaviors. This study investigated whether the three facets of the Dark Triad prospectively predict psychological intimate partner violence (IPV) perpetration, and whether these effects are mediated by higher experiences of ostracism, an extra-relational factor. We focused on psychological IPV in romantic and marital relationships and conducted two three-wave longitudinal surveys over 6 months. We recruited 1,021 romantically involved individuals in Study 1 and 1,608 married individuals in Study 2. Across the studies, Machiavellianism, psychopathy, and narcissism at Time 1 were significantly positively correlated with psychological IPV perpetration at Time 3 respectively, and ostracism at Time 2 was significantly positively associated with psychological IPV perpetration at Time 3. Furthermore, the latent cross-lagged effects model indicated that Machiavellianism and psychopathy prospectively predicted psychological IPV perpetration at Time 3 through higher experiences of ostracism at Time 2 in both romantic and marital relationships. These results suggest the need for considering everyday experiences outside of intimate relationships for the prevention and intervention of IPV.

親密なパートナーに対する暴力「Intimate Partner Violence(以下,IPVとする)」は,世界的に重大な公衆衛生上の問題であるとされる。WHO(2024)では,IPVを「親密な関係における,身体的暴力,性的強要,心理的虐待,支配的行動などを含む,身体的,性的,心理的な危害をもたらす行為」と定義している。本邦においては,一般的に,夫婦関係におけるIPVをDV(Domestic Violence),恋愛関係におけるIPVをDaV(Dating Violence)あるいはデートDVと呼称することが多い。内閣府男女共同参画局(2024)の調査によれば,配偶者からのIPVの被害経験は25.1%,交際相手からのIPVの被害経験は18.0%であり,その割合の高さから見ても問題の深刻さが窺える。

これまでIPV加害と関連する要因については,国外の研究を中心にさまざまな観点から検討がなされており,たとえば,ネガティブ感情や抑うつ,過去の反社会的行動,また,社会経済的背景の低さ等がIPV加害のリスク要因となり得ることが示されている(Birkley & Eckhardt, 2015; Costa et al., 2015, for a review)。また,加害者のパーソナリティ特性も,IPV加害のリスク要因であることが知られており,その中でも,特にダークトライアドは,IPV加害との関連が深いことが多くの研究で報告されている(たとえば,Carton & Egan, 2017; Kiire, 2017; Mills-Koonce et al., 2023)。

ダークトライアドとは,周囲から嫌悪感を抱かれやすい,反社会的パーソナリティであるマキャベリアニズム,サイコパシー傾向,自己愛傾向という3つの特性の総称である(Paulhus & Williams, 2002)。マキャベリアニズムは,シニカルな態度やモラルの欠如,他者操作性といった特徴を,サイコパシー傾向は,共感性や罪悪感の欠如,衝動性や断続的な社会的規範に反する行為といった特徴をもち,また,自己愛傾向は,優越感や自己顕示欲の強さ,特権意識といった特徴を有するとされる(Muris et al., 2017)。ダークトライアドの3要素は,定義上の相違はあるものの,対人関係における操作性や冷淡さ(Jones & Figueredo, 2013),攻撃性や敵意の高さといった共通点を有している(Jonason & Webster, 2010)。

ダークトライアドとIPV加害との関連については,横断的研究において,これまでいくつかの報告がなされている。たとえば,ダークトライアドの3要素は,身体的ならびに心理的IPV加害と正の関連を示すことが知られており,特に,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向については,その関連性は比較的堅固といえる(Carton & Egan, 2017; Mills-Koonce et al., 2023)。ただし,それらの研究はいずれも横断的なものであり,ダークトライアドが,将来的なIPV加害を予測するかについては明らかになっているとは言い難い。また,縦断的な観点から,ダークトライアドの3要素の高さが,将来的なIPV加害と関連することを示した研究もあるが(Kanemasa et al., 2022),それらの関連にのみ着目しており,そこに介在する要因についての検討はなされていない。それゆえ,本研究では,縦断的調査を実施し,ダークトライアドから将来的なIPV加害との関連について,その媒介要因を加味しながら検討を行うこととする。

ダークトライアドと将来的なIPV加害との関連について検討する上で,それらの関連を介在する要因,特に,親密な関係外の要因に着目することは,IPVという事象が,関係内の諸要因に留まらず,外部の要因とも連関し得ることを示すという点で意義がある。これまでIPV加害のリスク要因についての研究の多くは,親密な関係内の要因,すなわち,関係内の個人のパーソナリティ特性やメンタルヘルス,感情経験,関係満足度をターゲットにしてきた(たとえば,Birkley & Eckhardt, 2015; Carton & Egan, 2017; Hammett et al., 2021; Mills-Koonce et al., 2023)。しかしながら,親密な関係外の要因,つまり,個人のもつ親密な関係外の社会的ネットワークがIPV加害に関与している可能性がある。実際,2020年からCOVID-19が世界的に蔓延したが,その期間にIPVが増大したこと,また,IPVを引き起こす要因の一つに,加害者側の社会的孤立や孤独感があったことが指摘されている(Bhuptani et al., 2023; Spencer et al., 2022)。それらの研究では,親密な関係外の周囲の他者との軋轢や不和が,潜在的加害者のストレスを高め,それが親密な関係内に持ち込まれることでIPVを誘発したのではないかと考察されている。つまり,親密な関係外の周囲の他者との関係性が,IPV加害と連関し得るというのである。この点を踏まえ,本研究では,親密な関係外の周囲の他者との関係性,つまり,個人が日常的に経験している社会的排斥(Ostracism)に着目し,そのような社会的排斥経験が,ダークトライアドと将来的なIPV加害との関連を媒介するのかについて検討を行う。

社会的排斥とは,周囲の他者から無視されたり,排除されたりすることと定義される(Williams, 2007)。社会的排斥を経験することは,個人に対してネガティブな帰結をもたらし,たとえば,心理的,精神的健康を毀損させることが報告されている。加えて,社会的排斥経験は,所属欲求という人にとっての基本的な欲求を満たすことを阻害し,それが叶わない場合,他者に対する攻撃性や敵意を高めるとされるが(Williams, 2009; Williams & Nida, 2022),それは,時として排斥に関わっていない第三者に向けられることがある(Twenge et al., 2001)。また,近年のメタ分析では,社会的排斥経験は,向社会的行動を抑制させ,攻撃的行動を促進させることが報告されている(Quarmley et al., 2022)。このような社会的排斥の影響が,排斥とは関わりのない親密な関係にまで及び,恋人や配偶者への攻撃性を高めるのであれば,社会的排斥の経験がIPV加害を誘発するという可能性は十分にある。

ダークトライアドと社会的排斥や孤立との関連については,ダークトライアドの高い人は,反社会的行動を取りやすく,また,共感性も低いことから(Jonason & Krause, 2013),周囲の他者と軋轢が生じやすく,社会的な排斥や孤立を経験しやすいことが推察される。実際,近年の研究では,ダークトライアドの3要素の高さは,日常的な社会的排斥経験と正の相関を示すこと(Turan et al., 2024),また,シナリオで実験的に操作されたダークトライアドの高さは,社会的排斥を誘発しやすいことが報告されている(Xu et al., 2024)。さらに,ダークトライアドは,孤独感とも関連を示し,特に,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は,孤独感と正の相関を示すとされる(Zhang et al., 2015)。これらの結果を踏まえると,ダークトライアドは,後の社会的排斥を予測するものと考えられる。

IPVについては,身体的暴力,心理的攻撃,経済的圧迫,性的強要等,さまざまな形態を取るとされるが1,本研究では,特に心理的なIPV加害に焦点を当てる。内閣府男女共同参画局(2024)によれば,夫婦関係において,「平手で打つ」や「足でける」といった身体的暴力が,暴力であると認識される割合は,前者が86.9%,後者が91.2%と高いものの,「大声でどなる」あるいは「交友関係や行き先,電話・メールなどを細かく監視する」といった心理的攻撃に該当するものについて暴力と認識される割合は,それぞれ58.8%,69.9%とそれほど高くはない。しかし,暴力との認識度は高くないものの,心理的IPV被害は,身体的IPV被害と同等もしくはそれ以上の影響を個人の身体的・精神的健康に及ぼすことが報告されており(O'Leary, 2001),身体的な危害がないとしても,それを軽視することはできない。さらに,心理的IPVが,将来的に身体的IPVへとつながっていくことを踏まえると(O'Leary, 2001; Salis et al., 2014),IPVの一次あるいは二次予防を思索するためには,心理的IVP加害のリスク要因について検討を加える必要性は高いといえる。これらのことから,本研究では,心理的IPVをターゲットに検討を行っていく。

本研究の目的

これまでの議論を踏まえ,本研究では二つの親密な関係を対象に3波縦断調査を実施し,ダークトライアド(第1波)が,後の社会的排斥(第2波)を媒介して,将来的な心理的IPV加害(第3波)を予測するのかについて交差遅延効果モデル(cross-lagged panel model: CLPM)を用いて検討を加えることとする。その際,研究1では恋人のいる個人を,研究2では結婚している個人を対象として検討することで,研究結果の再現性を担保する。

研究1の恋愛関係および研究2の夫婦関係の両関係において,第1波のダークトライアドは,後続の第2波の社会的排斥経験ならびに第3波の心理的IPV加害と正の相関を示すものと想定される。ただし,自己愛傾向については,これまでの研究において,孤独感や心理的IPV加害との関連が薄いことから(Carton & Egan, 2017; Mills-Koonce et al., 2023; Zhang et al., 2015),3要素の中でも,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向について上記の仮説を設定し,自己愛傾向については探索的な検討とする(仮説1)。加えて,恋愛関係ならびに夫婦関係の両関係で,第1波のダークトライアドの3要素が,第2波の社会的排斥経験を媒介して第3波の心理的IPV加害を予測するのかについて検討を行う。その際,CLPMを実施することで,個人間の関係,すなわち,ダークトライアドが高い人ほど,将来的な心理的IPV加害が高くなるのか,また,その関連を社会的排斥経験が媒介するのかについて検討を行っていく。この点についても,上記と同様,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向に関してのみ仮説を設定し,自己愛傾向については探索的な検討とする(仮説2)。

倫理的配慮

本研究は,追手門学院大学研究倫理委員会からの承認を得て実施された(承認番号:2022-21,2023-24)。Web調査の開始画面には,データは統計的に処理されるため調査参加者の匿名性は保たれること,恋愛や夫婦関係についての質問が含まれることが説明され,同意した場合に回答に進むよう参加者に求めた。

研究1

研究1では,現在恋人がいる者を対象に6ヵ月間の3波縦断調査を実施し,第1波のマキャベリアニズムとサイコパシー傾向が,後続の第2波の社会的排斥経験ならびに第3波の心理的IPV加害と正の相関を示すのかについて,また,CLPMの結果,第1波のマキャベリアニズムおよびサイコパシー傾向が,第2波の社会的排斥経験を媒介して第3波の心理的IPV加害を予測するという仮説について検討を加える。なお,自己愛傾向については,仮説を設定せず,探索的に検討する。

回答者と実施方法

調査会社(クロスマーケティング社)を利用し,恋愛関係に関する縦断調査の実施を目的に,10代後半から30代の現在恋人がいる参加者を募集するためのスクリーニング調査を行った。第1波の調査時点(2022年11月4日―14日)で,現在恋人がいる者,3,107名が調査に参加したが,「この項目は『あまりあてはまらない』を回答してください」というフィラー項目(三浦・小林,2018)に正反応を示さなかった者583名を除外し,2,524名(男性1,228名,女性1,296名)に対して,第2波以降の調査を依頼,実施した2。

第2波は,第1波の3ヵ月後の2023年2月4日―14日に,第3波は,第2波の3ヵ月後の2023年5月4日―14日に実施された。第1波から第3波までの3つの調査全てに参加し,かつその間,第一波の恋人との関係が継続していると回答した者,1,021名(男性422名,女性599名)を分析の対象とした。この1,021名というサンプルサイズは,有意水準5%,統計的検出力.80で効果量(r=.100)を検出するために必要な779人を上回っている(Faul et al., 2009)。第1波において,回答者の平均年齢は,31.74歳(SD=5.36),パートナーの平均年齢は,32.47歳(SD=8.06),交際期間の平均は,46.28ヵ月(SD=47.32)であった。

調査内容

調査内容は,3つの調査で同一のものであった。回答者のデモグラフィックな特徴として,本人の性別,年齢,恋人の年齢,交際期間,職業,学歴を尋ねた3。

ダークトライアドの測定尺度  田村他(2015)によって邦訳された日本語版Dark Triad Dirty Dozenを用いた。オリジナル版は,Jonason & Webster(2010)によって作成されたものであり,ダークトライアドの3要素を,それぞれ4項目によって測定する。回答者は,各項目について「1=全くあてはまらない」から「5=非常にあてはまる」の5件法での評定を行った。

社会的排斥経験の測定尺度  社会的排斥経験の測定には,Ostracism Short Scale(以下,OSSとする)を用いた。OSSは,ある特定の期間に周囲の他者から排斥されていると感じる主観的な頻度を測定する尺度であり,Rudert et al.(2020)によって作成されたものである。著者らは,原著者からの承諾を得て,バックトランスレーションの手順を踏み,邦訳化を行った4。オリジナル版のOSSは「過去2ヵ月間」に関する排斥の頻度を評価するが,本研究での縦断調査期間との対応をはかるため,「過去3ヵ月間」と変更し,その間に「あなたは,以下のような出来事をどのぐらい経験しましたか」を回答者に尋ねた。回答者は,「他の人たちが,私のことを無視した」,「他の人たちが,私を会話に入れてくれなかった」,「他の人たちが,まるで私がそこにいないかのように扱った」,「他の人たちが,私を社会的な活動から仲間外れにした」の4つの項目に対して,「1=全くなかった」から「7=いつもあった」の7件法で回答を行った。得点が高いほど,排斥経験の頻度が高いことを意味する。

心理的IPV加害の測定尺度  恋愛関係での心理的IPV加害の頻度を測定するため,パートナーへの間接的暴力加害の測定尺度を用いた(相馬他,2004)5。縦断調査の期間と対応させるため,「この3ヵ月間のあなたの恋人に対する行動」を尋ねた。回答者は,6つの項目に対して,「1=全くなかった」,「2=1,2度あった」,「3=たまにあった」,「4=よくあった」,「5=非常によくあった」の5件法で回答を行った。

本研究は,恋愛関係に関する研究プロジェクトの一環として実施され,上記の尺度と合わせて他の尺度等もWebアンケートの調査票には含まれていたが,ここではそれらについては報告しない。

分析方針

記述統計量を算出した後,仮説1を検証するため,第1波から第3波の変数間の関連について,R(ver. 4.3.1)を用いて潜在変数間の相関係数を算出した(なお,ピアソンの相関係数についても,SPSS(ver. 27;IBM,SPSS Inc.)を用いて算出した)。

次に,仮説2を検証するため,R(ver. 4.3.1)でlavaan(Rosseel, 2012)ならびにmanymore(Cheung & Cheung, 2024)のパッケージを用いて,潜在CLPM(latent CLPM)を実施し,第1波のダークトライアドの各要素から第2波の社会的排斥経験への,さらに,第3波の心理的IPV加害への将来的な効果について検討を行った。つまり,3つの時点の同一変数間の自己回帰の効果(autoregressive effect)を加味した上でも,ダークトライアドの3要素が,後続の社会的排斥経験を予測するのか,また,社会的排斥経験が,後の心理的IPV加害を予測するのかについて検討を行った。

潜在CLPMでは,各尺度の項目から推定された潜在変数に対してCLPMを実施する。その際,Orth et al.(2021)の推奨に準じ,パラメータ推定の精度と結果の明瞭性を向上させるため,非標準化自己回帰パス係数(同一の潜在変数間のパス係数)ならびに非標準化交差遅延パス係数(ダークトライアドの各要素から社会的排斥経験への,また,社会的排斥経験から心理的IPV加害への異なった潜在変数間のパス係数)に対して等値制約を課した。モデルの適合度の評価のためには,CFI(comparative fit index),TLI(Tucker-Lewis index),RMSEA(root mean square error of approximation)を用いることとした。CFIとTLIについては,それらの値が.90以上だと許容範囲の適合度,.95以上だと良好な適合度を見なすことができ,また,RMSEAの値については,.08以下が許容範囲の,.06以下が良好な適合度と見なすことができるとされる(Hu & Bentler, 1999; Marsh et al., 2005)。なお,Orth et al.(2024)によれば,CLPMでは,標準化パス係数が,.03から.06であれば小さい効果,.07から.11だと中程度の効果,.12以上は大きい効果を示すとされる。また,第1波のダークトライアドの3要素が,第2波の社会的排斥経験を媒介して第3波の心理的IPV加害を予測するのかについては,5,000回反復のブートストラップ法を用いて間接効果の検討を行った。その際,間接効果は,95%バイアス補正ブートストラップ信頼区間に0が含まれていなければ有意であると判断できる(Preacher & Hayes, 2008)。

結果と考察

恋愛関係に関する基本統計量と各変数の相関関係  第1波から第3波の各変数の信頼性係数を算出した結果,α=.669―.970と,それらの値は許容範囲であった6(なお,測定項目の評定尺度値の平均によって算出された各変数の平均ならびに標準偏差については,J-STAGE電子付録のTable S1に示した)。

次に,各尺度および下位尺度の測定項目から推測される潜在変数間の相関係数を求めた(Table 1; Table 1には仮説に対応する部分の結果を記載した。全潜在変数間の相関係数ならびに評定尺度値の平均によって算出された各変数の得点を用いたピアソンの相関係数については,J-STAGE電子付録のTable S1に示した)。その結果,第1波のマキャベリアニズムならびにサイコパシー傾向は,第2波の社会的排斥経験とそれぞれ有意な正の相関を示した(r=.215, p<.001; r=.286, p<.001)。加えて,第1波のマキャベリアニズムとサイコパシー傾向は,第3波の心理的IPV加害ともそれぞれ有意な正の相関を示していた(r=.212, p<.001; r=.202, p<.001)。これらの結果は,仮説1を支持するものであるといえる。また,仮説は設定していないものの,第1波の自己愛傾向も,第2波の社会的排斥経験(r=.113, p=.001),また,第3波の心理的IPV加害(r=.130, p<.001)と有意な正の相関を示していた。加えて,第2波の社会的排斥経験は,後の第3波の心理的IPV加害と有意な正の相関を示していた(r=.245, p<.001)。

Table 1

Bivariate Correlations Between Latent Variables in Study 1

Time 2 Time 3
Mac Psy Nar Ost PIP Mac Psy Nar Ost PIP
Note. n = 1021. Mac = Machiavellianism, Psy = Psychopathy, Nar = Narcissism, Ost = Ostracism, PIP = Psychological IPV perpetration. |r|s ≥ .100 have ps < .01; |r|s > .120 have ps < .001.
Time 1
Machiavellianism .793 .621 .527 .215 .203 .770 .587 .545 .294 .212
Psychopathy .612 .916 .277 .286 .198 .603 .867 .294 .350 .202
Narcissism .539 .284 .840 .113 .105 .507 .286 .823 .200 .130
Ostracism .292 .293 .191 .635 .187 .276 .327 .204 .654 .185
Psychological IPV perpetration .248 .234 .154 .183 .548 .184 .184 .156 .187 .491
Time 2
Machiavellianism – .856 .753 .309 .242 .823 .648 .592 .301 .248
Psychopathy – .499 .387 .291 .659 .877 .363 .345 .234
Narcissism – .206 .145 .509 .316 .831 .189 .164
Ostracism – .303 .299 .349 .214 .667 .245
Psychological IPV perpetration – .223 .222 .145 .184 .554

これらの結果から,ダークトライアドの3要素は,後の社会的排斥経験,さらに,恋愛関係における将来的な心理的IPV加害の高さと関連するということができる。

恋愛関係における潜在CLPMの結果と間接効果の検討  第1波のダークトライアドの3要素が,第2波の社会的排斥経験を媒介して第3波の心理的IPV加害を予測するのかについて検討を行うために,ダークトライアド3要素の各々に関して,潜在CLPMを実施した7。それらの結果をFigure 1に示した。

Figure 1

The Results of the Latent Cross-Lagged Panel Model Among Three components of Dark Triad, Ostracism, and Psychological IPV Perpetration in Romantic Relationships

Note. Standardized factor loadings of each measurement model and effects of covariates and concurrent relations are not depicted for the sake of clarity. The values represent the standardized coefficients, and showing the values for Machiavellianism, psychopathy, and narcissism from top to bottom. IPV = intimate partner violence.

* p < .05, ** p < .01, *** p < .001.

まず,マキャベリアニズムについては,モデルの適合度は,χ2(763)=2228.43, p<.05, CFI=.961, TLI=.956, RMSEA=.043(90%CI[.041, .045])と良好であった。第1波のマキャベリアニズムは,第2波の社会的排斥経験の高さを予測し(β=.049, p=.017),さらに,第2波の社会的排斥経験は,第3波の心理的IPV加害の高さを予測していた(β=.078, p=.003)。Orth et al.(2024)の基準に従えば,マキャベリアニズムは後の社会的排斥経験に対して小さな効果を,社会的排斥経験は後続の心理的IPV加害に中程度の効果を及ぼしていたといえる。加えて,ブートストラップ法(5,000回反復)によって,マキャベリアニズムから社会的排斥経験を介した心理的IPV加害への間接効果の検討を行った結果,95%バイアス補正ブートストラップ信頼区間に0は含まれておらず,有意となった(b=0.002, 95% CI[0.0003, 0.0054])。

サイコパシー傾向については,モデルの適合度は,χ2(763)=2155.67, p<.05, CFI=.960, TLI=.954, RMSEA=.042(90%CI[.040, .044])と良好であった。第1波のサイコパシー傾向は,第2波の社会的排斥経験の高さを(β=.081, p=.001),さらに,第2波の社会的排斥経験は,第3波の心理的IPV加害の高さを予測していた(β=.079, p=.003)。Orth et al.(2024)の基準からは,それらの効果は,ともに中程度ということができる。加えて,サイコパシー傾向から社会的排斥経験を介した心理的IPV加害への間接効果は有意であった(b=0.005, 95%CI[0.001, 0.010])。

自己愛傾向についてのモデルの適合度は,χ2(763)=2194.76, p<.05, CFI=.961, TLI=.956, RMSEA=.043(90%CI[.041, .045])と良好であった。しかしながら,第1波の自己愛傾向は,第2波の社会的排斥経験の高さを予測しておらず(β=.015, p=.41),自己愛傾向から社会的排斥経験を介した心理的IPV加害への間接効果も有意ではなかった(b=0.001, 95%CI[‒0.001, 0.003])。

潜在CLPMの結果から,マキャベリアニズムならびにサイコパシー傾向については,間接効果が有意となり,仮説2は支持されたといえる。また,仮説を設定していなかった自己愛傾向については,第1波の自己愛傾向から第2波の社会的排斥経験へのパスは非有意であり,かつ,間接効果についても有意ではなかった8。

研究2

研究2では,研究1と同様の検討を夫婦関係について行う。それゆえ,結婚している者を対象に6ヵ月間の3波縦断調査を実施し,まず,第1波のマキャベリアニズムとサイコパシー傾向が,第2波の社会的排斥経験ならびに第3波の心理的IPV加害と正の相関を示すのかを検討する。加えて,CLPMを実施し,第1波のマキャベリアニズムおよびサイコパシー傾向が,第2波の社会的排斥経験を介して第3波の心理的IPV加害を予測するのかについて検討を行う。夫婦関係での検討においても,自己愛傾向については探索的なものとする。

回答者と実施方法

研究1と同様,調査会社(クロスマーケティング社)を利用し,夫婦関係に関する縦断調査の実施のため,スクリーニング調査を行い,20代から50代の現在結婚している参加者を募集した。3,655名が調査への参加意思を示したが,研究1と同様,第1波のフィラー項目(三浦・小林,2018)に正反応を示さなかった者,1,171名を除外し,2,484名(男性1,229名,女性1,255名)に第2波以降の調査を依頼,実施することとした。

調査の実施は,第1波が2024年1月10日―16日,第2波が2024年4月10日―21日,第3波が2024年7月10日―16日であった。第1波から第3波までの3つの調査全てに参加し,かつその間,結婚が継続していると回答した者,1,608名(男性832名,女性776名)を分析の対象とした。研究2のサンプルサイズ,1,608名は,統計的検出力.80で効果量(r=.100)を検出するために必要な779人を上回っている(Faul et al., 2009)。第1波において,回答者の平均年齢は,42.39歳(SD=10.11),配偶者の平均年齢は,43.08歳(SD=10.52),結婚期間の平均は,13.84年(SD=9.71)であった。

調査内容

研究1と全く同じ尺度を用いたが,心理的IPV加害の測定についてのみ,教示を「この3ヵ月間のあなたの配偶者に」と変更した。回答者のデモグラフィックな特徴としては,本人の性別,年齢,配偶者の年齢,結婚期間,職業,学歴を尋ねた9。

本研究は,夫婦関係に関する研究プロジェクトの一環として実施されたため,Webアンケートの調査票には,本研究で用いた尺度以外のものも含まれていたが,ここではそれらについては報告しない。

分析方針

分析方針については,研究1と全く同じである。

結果と考察

夫婦関係に関する基本統計量と各変数の相関関係  第1波から第3波の各変数の信頼性係数を算出した結果,α=.719―.975と,すべて許容範囲の値を示していた(測定項目の評定尺度値の平均によって算出された各変数の平均と標準偏差については,J-STAGE電子付録のTable S2に示した)。

次に,各尺度および下位尺度の測定項目から推測される潜在変数間の相関係数を求めた(Table 2; 研究1と同様,Table 2には仮説に対応する部分の結果を記載した。全潜在変数間の相関係数ならびに観測変数間のピアソンの相関係数については,J-STAGE電子付録のTable S2に示した)。その結果,研究2の夫婦関係についても,研究1の恋愛関係と同様に,第1波のマキャベリアニズムならびにサイコパシー傾向は,第2波の社会的排斥経験とそれぞれ有意な正の相関を示し(r=.313, p<.001; r=.330, p<.001),さらに,第3波の心理的IPV加害ともそれぞれ有意な正の相関を示した(r=.278, p<.001; r=.269, p<.001)。これらの結果から,研究2においても仮説1は支持されたといえる。また,第1波の自己愛傾向も,第2波の社会的排斥経験(r=.251, p<.001),第3波の心理的IPV加害(r=.246, p<.001)と有意な正の相関を示していた。加えて,第2波の社会的排斥経験,後の第3波の心理的IPV加害と有意な正の相関を示していた(r=.320, p<.001)。

Table 2

Bivariate Correlations Between Latent Variables in Study 2

Time 2 Time 3
Mac Psy Nar Ost PIP Mac Psy Nar Ost PIP
Note . n = 1608. Mac = Machiavellianism, Psy = Psychopathy, Nar = Narcissism, Ost = Ostracism, PIP = Psychological IPV perpetration. All |r|s have ps < .001.
Time 1
Machiavellianism .692 .564 .570 .313 .278 .695 .546 .575 .292 .278
Psychopathy .548 .802 .379 .330 .256 .529 .766 .379 .344 .269
Narcissism .545 .375 .749 .251 .235 .545 .376 .744 .262 .246
Ostracism .346 .352 .290 .573 .305 .356 .356 .307 .568 .317
Psychological IPV perpetration .286 .277 .265 .337 .566 .273 .267 .242 .356 .575
Time 2
Machiavellianism – .878 .851 .443 .347 .756 .598 .630 .358 .296
Psychopathy – .701 .486 .322 .616 .819 .476 .387 .263
Narcissism – .399 .323 .612 .467 .797 .303 .242
Ostracism – .398 .368 .378 .328 .652 .320
Psychological IPV perpetration – .316 .284 .284 .391 .632

これらの結果から,研究1と同様に,ダークトライアドの3要素は,後の社会的排斥経験の高さ,また,夫婦関係における将来的な心理的IPV加害の高さと関連していることが示された。

夫婦関係における潜在CLPMの結果と間接効果の検討  夫婦関係における仮説2の検討のため,潜在CLPMを実施し,ダークトライアド3要素の各々の結果をFigure 2に示した。

Figure 2

The Results of the Latent Cross-Lagged Panel Model Among Three components of Dark Triad, Ostracism, and Psychological IPV Perpetration in Marital Relationships

Note. Standardized factor loadings of each measurement model and effects of covariates and concurrent relations are not depicted for the sake of clarity. The values represent the standardized coefficients, and showing the values for Machiavellianism, psychopathy, and narcissism from top to bottom. IPV = intimate partner violence.

* p < .05, ** p < .01, *** p < .001.

マキャベリアニズムについてのモデルの適合度は,χ2(763)=2878.26, p<.05, CFI=.969, TLI=.966, RMSEA=.042(90%CI[.040, .043])と良好であった。第1波のマキャベリアニズムは,第2波の社会的排斥経験の高さ(β=.090, p<.001),さらに,第2波の社会的排斥経験は,第3波の心理的IPV加害の高さを予測していた(β=.103, p<.001)。それらはOrth et al.(2024)の基準から,中程度の効果ということができる。加えて,間接効果の検討の結果,マキャベリアニズムから社会的排斥経験を介した心理的IPV加害への間接効果は有意であった(b=0.008, 95%CI[0.004, 0.013])。

サイコパシー傾向についてのモデルの適合度は,χ2(763)=2843.04, p<.05, CFI=.968, TLI=.964, RMSEA=.041(90%CI[.040, .043])と良好であった。第1波のサイコパシー傾向は,第2波の社会的排斥経験の高さを(β=.106, p<.001),第2波の社会的排斥経験は,第3波の心理的IPV加害の高さを予測しており(β=.109, p<.001),それらはともに中程度の効果であった。さらに,サイコパシー傾向から社会的排斥経験を介した心理的IPV加害への間接効果についても有意であった(b=0.013, 95%CI[0.007, 0.022])。

自己愛傾向のモデルの適合度は,χ2(763)=2923.18, p<.05, CFI=.968, TLI=.964, RMSEA=.042(90%CI[.040, .044])と良好であった。第1波の自己愛傾向は,第2波の社会的排斥経験の高さを(β=.057, p=.002),第2波の社会的排斥経験は,第3波の心理的IPV加害の高さを予測しており(β=.109, p<.001),Orth et al.(2024)の基準からは,前者は小さい効果,後者は中程度の効果といえる。さらに,自己愛傾向から社会的排斥経験を介した心理的IPV加害への間接効果も有意であった(b=0.006, 95%CI[0.002, 0.011])10。

総合考察

本研究は,研究1では現在恋人のいる者を,研究2では結婚している者を対象として6ヵ月の3波縦断調査を実施し,反社会的パーソナリティ特性であるダークトライアドの3つの要素が,後の社会的排斥経験を媒介して,将来的な心理的IPV加害を予測するかについての検討を行った。本研究では,恋愛関係と夫婦関係という2つの親密な関係における心理的IPVを扱ったが,マキャベリアニズムならびにサイコパシー傾向については,双方の関係において,上記の媒介過程が認められた。本総合考察では,設定した仮説ならびに恋愛関係と夫婦関係の結果についての同異の観点から,考察を行っていく。

まず,研究1と研究2の相関分析の結果から,恋愛関係と夫婦関係の双方において,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は,第2波の社会的排斥経験ならびに第3波の心理的IPV加害と正の相関を示すという仮説1が支持された。マキャベリアニズムならびにサイコパシー傾向と社会的排斥経験との関連については,これまで横断研究においては示されていたものの(Turan et al., 2024),同様の関連性が縦断的にも認められたといえる。加えて,心理的IPV加害との関連についても,これまでの横断研究において示されてきた結果(Carton & Egan, 2017; Mills-Koonce et al., 2023)と整合するだけでなく,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向の高さは,将来的な心理的IPV加害の頻度の多さと関連することが示された。この点については,先行の縦断研究でも同様の結果が報告されており(Kanemasa et al., 2022),その再現性を伺わせるものである。さらに,仮説としては設定していなかったものの,自己愛傾向も,第2波の社会的排斥経験ならびに第3波の心理的IPV加害と正の相関を示していた。これらの結果から,反社会的パーソナリティであるダークトライアドの3要素の高さは,その特性ゆえに周りとの軋轢を生み,社会的に排斥されているという感覚を抱きやすくさせ,加えて,恋愛,夫婦双方の関係でパートナーに対して心理的な暴力を加えやすくさせるという共通点を有するものと推察できる。

また,研究1と研究2で一貫して,社会的排斥経験の高さは,後続の心理的IPV加害の頻度の多さと関連していた。これらの結果は,社会的排斥の経験が,他者への攻撃性や敵意を誘発するという経時的欲求脅威モデル(Temporal need-threat model; Williams, 2009; Williams & Nida, 2022)の主張と整合するとともに,社会的な排斥や拒絶の経験が,向社会的行動を抑え,攻撃的行動を促すというメタ分析の結果(Quarmley et al., 2022)とも一貫する。本研究の結果は,そのような社会的排斥経験によって誘発された攻撃性や敵意が,心理的IPVとして恋人や配偶者に表出され得ることを示唆しているといえるだろう。

研究1と研究2の潜在CLPMの結果,第1波のマキャベリアニズムならびにサイコパシー傾向は,第2波の社会的排斥経験を媒介して第3波の心理的IPV加害を予測していた。これらの結果から,恋愛,夫婦の両関係で仮説2が支持されたといえる。すなわち,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向の高さは,後の社会的排斥の経験しやすさ,さらに,それを介して将来的な恋人や配偶者に対する心理的な暴力の振るいやすさを予測することが示された。マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は,自己愛傾向とは異なり,情動的共感性や誠実性の低さといった共通点をもつことが報告されているが(Jonason & Krause, 2013; Paulhus & Williams, 2002),それらの特性が周囲からの排斥や孤立を招き,さらに,日常的な排斥経験のストレスが,親密な関係に侵食することで,恋人や配偶者への心理的な暴力として表出されたのであろう。本研究の結果,ならびに先行研究の心理的IPVは将来的な身体的IPVへとつながるという結果(Salis et al., 2014)を踏まえれば,IPVへの介入あるいはIPVの一次・二次予防を考える上では,カップルの個人的な要因や関係満足度等の親密な関係内の要因のみならず,周囲の他者との関係性といった親密な関係外の要因についても考慮に入れる必要がある。すなわち,潜在的なIPV加害者がもつ友人関係や仕事関係の特質を加味した上で,IPVへの介入やその予防について検討していくことが重要となるだろう。

自己愛傾向の潜在CLPMの結果については,研究1と研究2の結果で齟齬が見られた11。研究2の結婚している個人を対象とした場合は,第1波の自己愛傾向が第2波の社会的排斥経験を介して第3波の心理的IPV加害を予測していたものの,研究1の現在恋人がいる個人を対象とした場合では,第1波の自己愛傾向から第2波の社会的排斥経験へのパスは非有意となった。これまでの研究では,自己愛傾向の高い者は,短期的な関係では魅力的であると評価されやすいが,関係が長期化するにつれてそのような恩恵は次第に薄れていくことが報告されている(Campbell & Campbell, 2009)。本研究の研究1の回答者は,研究2の回答者と比して,若年かつ未婚であったため,周囲の他者からの評価が低減する前に,関係を短期的に乗り換えることが比較的容易であったことから,上記のように,後の社会的排斥経験に対する自己愛傾向の影響が弱められたものと推察される。ただし,この点については,研究1と研究2との間にパス係数自体の有意な差は認められなかったことを踏まえ,今後,自己愛傾向と社会的排斥や孤立との関連についてより詳細に検討していく必要がある。

最後に,本研究の限界と今後の展望について触れておく。今回の研究では,社会的排斥経験や心理的IPV加害を回答者の自己報告により測定している。それゆえ,認知バイアスや社会的望ましさの影響については考慮する必要があるだろう。自己愛傾向が高い人の場合,その自己顕示欲の強さや特権意識から(Muris et al., 2017),社会的排斥に対して過敏で,その経験を他の人たちよりも過大に報告している可能性がある。また,心理的IPV加害に関しても,回答者本人とそのパートナーの認識のズレが存在する場合もあるだろう。それゆえ,今後の研究では,回答者からの回答のみならず,その周囲の人たちやパートナーからも縦断的にデータを収集し,今回のモデルの堅固さについて確認を行う必要がある。

加えて,本研究では,IPV加害の指標として,心理的IPVのみを扱っている。それは,被害者の身体的・精神的健康に及ぼす影響が心理的IPVも身体的IPVと同程度であること(O'Leary, 2001),また,心理的IPV加害が後の身体的IPV加害へとつながっていく可能性があること(O'Leary, 2001; Salis et al., 2014),といった先行研究の結果を踏まえてのものではあるが,それらのIPVの間には,質的な違いが存在することも十分に考えられる。今後は,より深刻なIPVを対象として検討を行っていく必要性があるだろう。さらに,心理的IPVが身体的IPVへ移行していくプロセスやそこに関連する要因を探ることも今後の重要な研究課題といえる。IPVは,可塑性が低いことから,それが生起する以前の,あるいはそれが進行するよりも前の段階での一次,二次予防が重要となってくるため,そこに寄与できる研究知見が求められるところである。

利益相反

本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない。

謝辞

本研究のバックトランスレーションにおいて,法政大学の新谷 優先生には多大なご協力をいただきました。ここに深く感謝申し上げます。

助成

本研究は,第1著者の令和5―7年度学術研究助成基金助成金(基盤研究(C),課題番号23K02843)ならびに追手門学院大学のプロジェクト型共同研究奨励費の補助を受けて実施された。

関連する発表

本研究の一部は,日本心理学会第88回大会(2024)において報告された。

電子付録

測定項目の評定尺度値の平均によって算出された各変数の平均と標準偏差,また,全潜在変数間の相関係数ならびに観測変数間のピアソンの相関係数については,J-STAGEの電子付録に示した。

1

内閣府男女共同参画局(2024)では,IPVを,身体的暴行,心理的攻撃,経済的圧迫,性的強要の4つに分類しているが,本研究で扱っている心理的IPVは,それらのなかの「心理的攻撃」に対応するものといえる。

2

フィラー項目については,教示文や尺度項目を読まずに回答する傾向のある回答者を分析から除外するため(三浦・小林,2018)に使用した。それゆえ,第2波ならびに第3波については,第1波でのフィラー項目への反応から,そのような回答者を除外できているものと考え,フィラー項目については使用しなかった。

3

回答者の職業は,学生が5.6%,常勤雇用が68.2%,自営業が5.0%,臨時雇用が12.2%,家事手伝いが1.4%,無職が5.6%,その他が2.1%であった。また,最終学歴は,中学校卒業が2.5%,高等学校卒業が21.2%,専門学校・短期大学・高等専門学校卒業が19.9%,大学卒業が49.6%,大学院卒業が6.9%であった。

4

バックトランスレーションについては,本論文の著者ではない社会心理学を専門とするバイリンガルの研究者に依頼した。

5

内閣府男女共同参画局(2024)によれば,親密な関係における心理的暴力は「例えば,人格を否定するような暴言,交友関係や行き先,電話・メールなどを細かく監視・制限したり,長期間無視するなどの精神的な嫌がらせ(p.27)」等とされる。相馬他(2004)の間接的暴力加害の測定尺度の項目は,それらと対応していることから,当該尺度は,心理的IPV加害を測定するのに適したものといえる。

6

サイコパシー傾向のα係数については,.669―.725と若干値が低くはあるものの,先行研究(田村他,2015)でも同程度の値が示されていたことから,今回の研究でも許容できるものと判断した。

7

Vize et al.(2018)によれば,ダークトライアドのように,相互に関連しながらも理論的には異なる下位要素から構成される概念については,ある要素について分析する際に,統計的に他の要素を統制してしまうと,残差成分が何を意味するのかが不明瞭となり,結果的に元の理論的な構成概念との乖離を生じさせてしまうことが指摘されている。それゆえ,本研究では,ダークトライアドの3要素について,それぞれ別々に潜在CLPMを実施することとした。なお,研究2についても同様の手法で分析を行った。

8

なお,第1波のダークトライアドの各要素から第3波の心理的IPV加害へ直接のパスを引いた潜在CLPMについても実施したが,本文と同様に,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向の間接効果は有意,自己愛傾向のみ間接効果は非有意となった。

9

回答者の職業は,学生が0.1%,常勤雇用が61.8%,自営業が3.7%,臨時雇用が13.4%,家事手伝いが18.9%,無職が1.3%,その他が0.9%であった。また,最終学歴は,中学校卒業が1.2%,高等学校卒業が22.5%,専門学校・短期大学・高等専門学校卒業が22.1%,大学卒業が47.8%,大学院卒業が6.5%であった。

10

研究1と同様に,第1波のダークトライアドの各要素から第3波の心理的IPV加害へ直接のパスを引いた潜在CLPMを実施したが,3要素すべての間接効果は有意であった。

11

研究1と研究2のモデル間にパス係数の差があるかを検討するため,パス係数に等値制約を課すモデルと等値制約を課さないモデルを多母集団同時分析によって比較した。ΔCFI<.010,ΔRMSEA<.015,ΔSRMR<.030を基準(Chen, 2007)とした結果,マキャベリアニズム(ΔCFI=.0065,ΔRMSEA=‒.0043,ΔSRMR=‒.0074),サイコパシー傾向(ΔCFI=.0063,ΔRMSEA=‒.0039,ΔSRMR =‒.0076),自己愛傾向(ΔCFI=.0059,ΔRMSEA=‒.0038,ΔSRMR=‒.0069)のいずれのモデルにおいても適合度の悪化は示されなかった。したがって,研究1と研究2との間にパス係数自体の有意な差はないと判断できる。

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