心理学研究
「心理学研究」は1926年に創刊され,隔月刊行(年6冊,4,6,8,10,12,2月)1年1巻とし,総頁約600頁で,原著論文,研究資料,研究報告,展望論文,会報欄があります。
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収録数 5,047本
(更新日 2022/05/21)
Online ISSN : 1884-1082
Print ISSN : 0021-5236
ISSN-L : 0021-5236
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優秀論文賞受賞論文
91 巻 (2020) 1 号 p. 23-33
指先が変える単語の意味 もっと読む
編集者のコメント

2021年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
本論文は,スマートフォンの日常的な長期使用が,フリック入力の反復を通して,文字,無意味単語,実在する有意味単語の感情価を変化させることを報告している。著者は,フリック入力における下向きと上向きの親指の動きが,それぞれ手前へと奥への運動であることに注目し,下フリックは接近,上フリックは回避の運動として捉えることができると考えた。接近運動はポジティブな感情と,回避運動はネガティブな感情と結びつくと論じた先行研究に基づき,入力時に下フリックを多く含む単語はポジティブな感情価を,上フリックを多く含む単語はネガティブな感情価を相対的に帯びることになると仮定し,このフリック効果の存在を5つの研究によって検証した。まず,フリック入力が実際に1.5cm以上の指の空間移動を伴うことを確認し(研究1),続いて,ひらがな清音46文字(研究2),782の無意味単語(研究3,研究4),978の単語(研究5)の感情価の評定を計1,500名以上の参加者に求めた。その結果,一貫して,フリック効果が確認され,また,この効果がスマートフォン未使用者には見られないことから(研究4,5),フリック入力と感情価変動の関係が強く示唆された。俄には信じ難い興味深い結果が,膨大な刺激数と十分なサンプルサイズの研究によって繰り返し再現される様は,科学的探求の醍醐味を教え,「良くも悪くも人間の心理は道具依存的でもある」という最終段落の一文を導く論考の精緻さは,爽やかな知的興奮を読後に残す。たとえ小さな影響でも,日常的に何百回と繰り返されることで蓄積され,検出可能となること,このような過程を経て,新しいテクノロジーが人間の心に影響を与え得ることを示した本論文は,新規性,独創性,研究手法の厳密さ,丁寧な考察が高く評価され,優秀論文賞にふさわしいと判断された。

90 巻 (2019) 3 号 p. 252-262
なぜ非行集団に同一化するのか もっと読む
編集者のコメント

2020年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
少年犯罪において,非行集団への同一化は非行リスクを高める一因となる。そのため,非行集団への同一化を規定する要因を検討することは,非行の抑止にとって重要である。本論文は,非行集団への同一化を規定する要因として,非行少年の差別経験と集団境界透過性(個人が社会的カテゴリー間を移行可能であると期待する程度)に注目した。少年鑑別所に入所していた男子少年を対象とした調査が行われた。その結果,同級生,教師や警察,地域住民から差別を受けたことがあると感じている少年は,差別を受けたことがないと感じている少年よりも非行集団への認知的同一化が高くなっていた。また,教師や警察から差別を受けたことがある場合,集団境界透過性が低い(非行集団から別な集団への移行可能性がない)少年は,集団境界透過性が高い少年よりも,集団への同一化が高くなっていた。本研究の特筆すべき点として,少年鑑別所に入所していた男子少年を調査対象者としているというデータの貴重さが挙げられる。また,非行少年の属性や内的要因ではなく,差別や集団境界透過性といった非行少年を取り巻く環境に注目している点も特筆すべき点である。そのため,考察で述べられた非行への再統合的な非難の表明や少年の居場所づくりといった非行抑止の対策が説得力を持ち,大きな実践的示唆を提供するものとなっている。本論文はこれらの点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。

89 巻 (2018) 2 号 p. 160-170
親密な関係破綻後のストーカー的行為のリスク要因に関する尺度作成とその予測力 もっと読む
編集者のコメント

2019年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
関係破綻後のストーカー的行為生起の心理的背景について,構造方程式モデリングを用いて明らかにした論文である。研究1ではインターネット調査会社のモニターを対象にした調査が行なわれ,別れた相手との交際時の関係性,関係破綻後の思考・感情を測定する尺度が作成された。研究2では,層化2段階無作為抽出法による全国調査が実施され,パーソナリティ特性(愛着不安と自己愛傾向)が過去の交際時の関係性に影響し,それらが関係破綻後の思考や感情に対して影響を及ぼすことでストーカー的行為が増大するという仮説モデルが検証された。その結果,男女共通して愛着不安および交際時の関係性の唯一性認知が,独善的執着を高め,ストーカー的行為の増大につながることが確認された。さらに,ジェンダーによる問題行動生起のメカニズムの差も明らかとなり,考察においては,従前の恋愛研究の知見との統合および発展が試みられた。ストーカー行為生起に対する心理学的研究は我が国ではまだ十分には行われておらず,本研究はこの嚆矢として位置付けられる。審査過程では,現実の社会問題解決につながる心理学的知見が明確に提出されている点,研究2において無作為抽出法に基づく全国調査が行われておりデータの信頼性が高い点,論理構成および文章が明快で説得力がある点が評価され,優秀論文にふさわしいと判断された。

89 巻 (2018) 6 号 p. 571-579
漢字の形態情報が共感覚色の数に与える影響 もっと読む
編集者のコメント

2019年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文
本論文は,文字を見ることで色を感じる色字共感覚と呼ばれる現象について,日本語における漢字の形態的特性の影響を,特に「偏」と「旁」の構造に注目して検討したものである。これまで,アルファベットなどの文字種に対する色字共感覚の生起には文字の形態,音韻,意味などの様々な情報が関与するが,漢字やカタカナ,ひらがなについては形態の影響が少ないとされてきた。一方,英単語では,複数語の連結によって構成される単語に対して複数の共感覚色が生じることが報告されており,偏や旁のような複数の構成要素を持つ漢字においても,複数の共感覚色が励起される可能性が考えられた。こうした背景から著者らは,偏や旁に分割可能な漢字(左右分割漢字)と,偏や旁に分割不可能な漢字(左右非分割漢字)に対して生じる共感覚色の数を比較する実験を行った。共感覚色が文字やその近傍のような外界に存在するように感じる共感覚者(投射型)と,外界ではなく頭の中に色の印象が喚起される共感覚者(連想型)らに,1つの漢字について最大2つの色を回答するよう求めたところ,左右分割漢字に対する共感覚色の回答数が左右非分割漢字よりも大きくなること,また,そうした傾向は投射型の共感覚者でより強いことが示された。漢字に固有の形態的特性に注目し,色字共感覚の生起過程との関係を明らかにした点で世界的にみてもユニークな研究であり,先行研究の丁寧なレビューに裏打ちされた精緻な議論が展開されている点も高く評価できる。以上を踏まえて,本論文は優秀論文賞に相応しいと判断された。

88 巻 (2017) 5 号 p. 460-469
性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連の検討 もっと読む
編集者のコメント

2018年度 心理学研究掲載 優秀論文賞受賞論文

授賞理由
性犯罪者が犯行を否認したり,責任を最小化したりすることは多くの臨床家や研究者によって認識されており,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯可能性を高めると捉えられている傾向にある。しかし,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化が将来の再犯と関連するか否かについては,実証的研究が少なく,一貫した結果が得られていない。先行研究の問題点として,サンプルサイズの小さいこと,性犯罪の種類が少ないこと,既知の再犯リスク(性犯罪の持続性,対象者との関係性)などが考慮されていないが挙げられる。これらの問題点を考慮して,本研究では,性犯罪者の犯行の否認・責任の最小化と再犯との関連を検討した。有罪判決を受けた者を対象とした縦断研究が行われ,既知の再犯リスクを考慮しても,犯行の否認・責任の最小化と再犯の関連はないことが示された。考察では,論文では有意な関連性が認められなかった背景が丁寧に記載されるとともに,否認者への対処への示唆も記載されている。例えば,先行研究で明らかになっている再犯のリスク要因に対して優先的に介入しながら,機を見て否認をめぐる話題を取り上げることなどである。本論文は性犯罪者に対する心理学的介入の方向性を考える上で有益な情報を提供する貴重な論文であり,その意義が高く評価された。また,文献レビューや文章展開が分かりやすい点も評価された。以上のことから,本論文は優秀論文賞に値する論文であると判断された。

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