思考過程の實驗方法に關する研究
ジャーナル
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1944 年
19 巻
1 号
p. 46-60
詳細
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発行日: 1944 年
受付日: 1944/02/17
J-STAGE公開日: 2010/07/16
受理日: -
早期公開日: -
改訂日: -
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訂正情報
訂正日: 2010/07/16
訂正理由: -
訂正箇所: 論文抄録
訂正内容: 訂正前 : 以上思考過程についての四つの實驗方法が擧げられ, これについて吟味がなされたが, これらの四つの方法は大體内觀的方法から行動心理學的方法への順で示され, 各方法がそれぞれ一つの例で代表させられた。かうした吟味に當つて思考過程についてのこれらそれぞれちがふ行き方による實驗方法に通じて見出されることゝして次の諸點が擧げられえる。
1. 實驗の結果として出て來た思考過程を被驗者の直接經驗である意識内容と考へて, 内觀心理學の方法による限りは, さうした思考過程は被驗者自身にだけしか直接知られないもので, 相互主觀性をもつた知識となりえない。それでもとの實驗の結果の被驗者の思考過程と追試實驗の結果の被驗者の思考過程とをたがひに比較することが出來ず, さうした結果が一致するかどうかをきめやうがない。したがつてこの方法をとる限りは追試が不可能とならう。
2. 實驗の結果出て來た思考過程をば, 實驗操作の全體過程の場にあつて被驗者の有機體についてその環境條件と反應との相屬關係からして機能的に構成されたものとする時に, この思考過程は相互主觀性をもつた知識となりえよう。被驗者の直接經驗としてでなく, このやうに内的必然性をもつて環境條件と反應との間に介在するものとして構成されると見られた意味での被驗者の思考過程は實驗操作にあつて誰れにでも構成されえようからだ。したがつてもとの實驗の結果の思考過程と追試實の結果の思考過程とはたがひに比較されえて思考過程の實驗が追試可能とならう。
3. 追試のためには實驗の條件がもとの實驗の條件と同一でなければならないが, その場合のたとへば被驗者に與へられる刺戟條件の同一について言へば, 刺戟は刺戟事物と刺戟意味とに區別されて考へられなければならないだらう。そして刺戟條件の同一といふ場合は刺戟意味の同一が考へられるべきだらう。この刺戟意味は次のやうにしてその性質を規定されよう。被驗者の有機體についてまつ刺戟事物が與へられると, これに對してその反應が呈され, そしてそこにこの反應の意味として被驗者の思考過程とされるものが機能的に構成される。こゝに出て來た反應の意味とさきの刺戟事物とをにらみあはせることによつて, この刺戟事物が被驗者にどう解されてゐるかといふ刺戟意味がきめられて來る。刺戟意味はこのやうに實驗操作の過程の場にあつて全體機能的に規定されえるので, 實驗の全體過程にさきだつて獨立にあらかじめきめて置くことは出來ない。したがつて刺戟事物としては同一でも刺戟意味としては同一でないことがあり, また逆に刺戟事物としてはちがつたものでも刺戟意味としては同等なことがありえよう。追試に當つての刺戟條件の同一といふことはこのやうにして實驗の全體過程からして規定される型としての刺戟の同一のことだとされよう。
以上に示されたやうな實驗方法をとる時, 思考過程についての實驗は内觀心理學的方法による場合とちがつてその追試が可能になると言へよう。
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