日本鼻科学会会誌
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原著
三叉神経の単神経障害を初発症状とした悪性リンパ腫例
後藤 理恵子米崎 雅史
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2017 年 56 巻 2 号 p. 103-109

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抄録

悪性リンパ腫は全身疾患であり様々な初発症状を生じるが,脳神経の単神経障害を初発症状とすることは稀である。しかし蝶形骨洞や翼口蓋窩周囲に病変が存在する場合には動眼神経や三叉神経障害を呈することがあり,鑑別疾患の一つとして留意しておく必要がある。今回,頭蓋内に明らかな病変がないにもかかわらず三叉神経の単神経障害を初発症状とした非常に稀な悪性リンパ腫症例を経験したので報告する。

症例は73歳女性。右口腔内の痛みと右下口唇・下顎部のしびれをきたし歯科口腔外科を受診した。歯科的な異常は認められず脳神経外科紹介となったが,頭部MRIで副鼻腔炎を認めたため当科を紹介された。右三叉神経第2・3枝領域の知覚障害があり,右鼻腔に壊死を伴うポリープ病変を認めた。またCTでは,右後篩骨洞から蝶形骨洞にかけて一部骨破壊や骨の菲薄化を伴う軟部陰影があり,右外側翼突筋周囲にも腫瘤陰影がみられた。鼻内からの生検の結果,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された。FDG-PETで複数の節外臓器に集積を認めたためStage IVと診断され,血液内科でR-CHOP療法と放射線治療を施行し寛解がえられた。

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