日本鼻科学会会誌
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原著
浸潤型副鼻腔真菌症の臨床的特徴と予後
佐々木 崇暢石岡 孝二郎若杉 亮池田 良池田 正直奥村 仁堀井 新
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2017 年 56 巻 2 号 p. 110-118

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抄録

副鼻腔真菌症は真菌が眼窩内や頭蓋内へと浸潤し致命的となる浸潤型と,限局した病変を呈する非浸潤型に大別される。我々は3年間に6例の浸潤型副鼻腔真菌症を診断加療し,その臨床的特徴と予後に関して検討した。

症例は71から86歳の男性で,発症からの経過により急性浸潤型1例,亜急性浸潤型4例,慢性浸潤型1例と分類した。3例でβ-Dグルカンおよびアスペルギルス抗原の上昇を認め,急性浸潤型症例では共に高値であった。全例に手術による病変除去を行ったが,慢性浸潤型を除く5例で副鼻腔外へ進展する壊死組織が見られ,重要臓器近傍の病変は残存した。病理学的検査では3例で真菌の粘膜下浸潤が確認できたが,壊死組織では真菌の浸潤は検出できなかった。病原菌はいずれもアスペルギルスだった。周囲組織浸潤を伴う5例に抗真菌薬の全身投与を行い,β-Dグルカン,アスペルギルス抗原を治療効果判定の1つとした。急性浸潤型の1例は術後4か月で他病死となったが,残る亜急性・慢性浸潤型は5例全例再燃なく経過している。

浸潤型副鼻腔真菌症の治療には外切開による広範囲手術が推奨されているが,ESSによる病変除去に加え,厳格な全身管理,抗真菌薬の全身投与により急性浸潤型も含めてある程度の病勢制御は可能と考えられた。アスペルギルスが病原菌の場合,β-Dグルカンやアスペルギルス抗原が浸潤程度と相関し,病型とともに予後判定因子として有用である可能性が示唆された。

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