2017 年 56 巻 2 号 p. 140-146
オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)は,皮膚・粘膜の毛細血管拡張や多臓器の動静脈奇形を特徴とする常染色体優性遺伝疾患で,鼻出血・奇異性脳塞栓・消化管出血などの症状を呈する。特に鼻出血はオスラー病患者の90%以上に認められる。オスラー病による鼻出血に対する外科的治療の一つに鼻粘膜焼灼術があり,KTPレーザーが広く用いられてきたが,近年は高周波電気凝固装置コブレーションシステム(コブレーター)を用いた鼻粘膜焼灼術による報告も散見される。コブレーターは低温処理可能なバイポーラーシステムであり,周囲組織への熱損傷が軽減される。また近年,オスラー病に伴う鼻出血の重症度を表す指標としてEpistaxis severity scoreが国際的に多く用いられている。
今回,保存加療に抵抗するオスラー病に伴う鼻出血に対して,コブレーターを用いた鼻粘膜焼灼術を6例12件施行した。術前後経過を正確に追えた10件のEpistaxis severity scoreについて検討を行った。Epistaxis severity scoreは術前と比較して,術後2週間・術後2ヵ月で有意に低下していた。コブレーターを用いた鼻粘膜焼灼術は保存加療に抵抗する場合は有用な選択肢と考えられた。