日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
原著
内視鏡下手術を行った浸潤型副鼻腔真菌症の2例
岸川 敏博西池 季隆田中 秀憲中村 恵大島 一男富山 要一郎
著者情報
ジャーナル フリー
電子付録

2017 年 56 巻 2 号 p. 147-153

詳細
抄録

浸潤型副鼻腔真菌症は骨破壊や周囲組織への浸潤を来し,かつては予後不良な疾病として知られていたが,近年では治療奏功例の報告も増えている。当院では過去2年間に同疾患2例の加療を行ったので報告する。症例1は77歳男性,受診2週間前より右頬部痛を生じ,右上顎洞に骨破壊病変を認めたことから,経鼻内視鏡下に右上顎洞から生検を行いアスペルギルス症と診断した。術後抗真菌薬投与を継続したが,7ヵ月後に右頬部痛が再発,病巣の翼口蓋窩への浸潤を認め,右内視鏡下上顎側壁開窓術を行った後に,厳重な抗真菌薬のコントロールによって良好な経過を得た。症例2は71歳男性,受診5ヵ月前から右目の視力が低下し,3ヵ月前に失明,1ヵ月前から右前額部痛が生じた。右眼窩先端から蝶形骨洞に広がる腫瘤影と視神経の圧迫を認め,右蝶形骨洞・眼窩内からの経鼻内視鏡下生検でアスペルギルス症と診断した。術後抗真菌薬継続も7ヵ月後に前額部痛の増強と内視鏡所見の悪化を認め,真菌症の増悪を疑い経鼻内視鏡下に眼窩先端部掻爬術を行った後に,抗真菌薬のコントロールによって良好な経過を得ている。両症例ともに病変の進展度に応じた減量手術が有効であったと考えられた。浸潤型副鼻腔真菌症の治療には速やかな確定診断と適切な抗真菌薬投与・外科的治療,また慎重な術後経過観察が重要である。

著者関連情報
© 2017 日本鼻科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top