日本鼻科学会会誌
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症例報告
顎矯正術後に鼻腔形態異常を生じ,手術加療を要した2症例
木勢 彩香洲崎 勲夫関野 恵里子丸山 祐樹上村 佐和浜崎 泰佑平野 康次郎嶋根 俊和小林 一女
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2023 年 62 巻 4 号 p. 637-644

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抄録

顎変形症は上顎骨や下顎骨の形態や大きさの異常により両者の不均衡が起き,咬合不正や顔貌の変形を来す疾患である。顎矯正術は顎変形に伴う咬合異常の改善と顎顔面の生理学的なバランスをとることを目的に行われる手術療法であり,本邦では歯科口腔外科医や形成外科医により施行されることが多い。代表的な術式として上顎に対してLe-Fort I型骨切り術,下顎に対して下顎枝矢状分断術,下顎枝垂直分断術やオトガイ形成術などの術式がある。上顎骨を上方に移動した場合には術後に鼻腔形態異常による鼻閉症状を来す可能性があるとされる。今回われわれは,顎矯正術後に鼻腔形態異常を来し,高度な鼻閉症状を呈した症例に手術加療を行うことで改善した2症例を経験した。両症例ともに,顎矯正術の影響と考えられる鼻中隔軟骨の前弯および総鼻道の容積の狭小化が鼻腔形態不良の原因として顕著であり,外鼻変形を伴わなかったことからhemitransfixion approachによる鼻中隔矯正術と両側粘膜下下鼻甲介骨切除術を施行し,鼻腔形態と自覚症状の改善が得られた。顎矯正術のうち,Le-Fort I型骨切り術に代表される上顎骨を移動させる術式では鼻腔形態異常を来す可能性があり,治療に際しては,個々の症例に合わせた術式の検討が必要である。

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