日本農村医学会雑誌
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特別研究班報告
農作業災害予防研究
佐々木 眞爾臼田 誠広澤 三和子夏川 周介大谷津 恭之堀 明洋武山 直治石突 正文
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2005 年 53 巻 5 号 p. 796-804

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抄録

 日本における農作業に伴う災害死亡数は, 毎年400名前後で推移し一向に減る気配がない。しかも, こうした死亡事故の背景となる農作業事故の実態把握さえなされていないのが現状である。そこで, 日本農村医学会の「農作業災害予防研究」特別研究班が設置された。
 本研究班では, 実態把握のための臨床例収集として, 本学会関連3医療機関に農業機械および農具による災害例の調査票を送付し, 平成14年10月~16年3月の間の症例収集を行ない, その結果141例が収集された。さらに, 農業機械による死亡事例の内で, 地域消防署の救急車が出動した5例についてケーススタディ調査を実施した。
 収集された臨床症例では, 草刈機, ハーベスタ, 乗用・歩行用トラクタ, カッターによる事故が多く, その原因は草刈機ではエンジン音で近くの人の存在に気づかなかったり, ハーベスタやカッターでは巻き込まれによるもの, トラクタでは横転による下敷きなどであった。死亡事故のケーススタディからは, 安全フレームやシートベルトの装着がトラクタでは不可欠であり, スピードスプレアでは万一の場合にキャビンが威力を発揮することが分かった。
 農業機械による事故を予防するためには, 基本的な使用方法,注意事項や応急手当などを具体的に啓蒙する講習会を頻繁に設けることが重要である。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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