乳腺外来初診時の視触診 (以下,PE),超音波検査 (以下,US) およびマンモグラフィ (以下,MMG) 各々の検査法で検出し得なかった乳癌症例 (以下見落とし群) を比較検討した。病理学的に乳癌が確定した90例のうちPEの見落とし症例数は13例,USは7例,MMGは15例で,有病正診率はそれぞれPEが85.6%,USが92.2%,MMGが83.3%であった。
二者併用診断として見ると,PE・US併用の検出率が95.6%,PE・MMG併用が97.8%であるのに対して,US・MMG併用が98.9%の検出率を示し最も効率が良かった。
PEとMMG見落とし群は各々の検出群に比し有意に小腫瘤径乳癌が多いが,US見落とし群ではUS検出群に比して有意差を認めず,USの見落としは腫瘤の大小ではなく乳癌のUS画像診断上の問題であることが示唆された。PE見落とし群は全乳癌症例に比して有意に組織学的悪性度,浸潤度が低いにもかかわらずリンパ節転移症例が多く,なおかつそれらのリンパ節転移症例はいずれも0.8~0.9mmの小腫瘤径乳癌であり,非触知でも看過できないことが示唆された。
現在,厚生労働省主導でPE・MMG検診が全国的に普及しつつあるが,必ずしもMMG万能ではなく見落としも多いので,効率の悪いPEを省いてUS・MMG検診を行なうべきである。