日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
原著
視触診・超音波・マンモグラフィ各々の乳癌見落とし例の検討
土屋 十次浅野 雅嘉立花 進熊澤 伊和生川越 肇名和 正人
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 55 巻 2 号 p. 65-75

詳細
抄録

 乳腺外来初診時の視触診 (以下,PE),超音波検査 (以下,US) およびマンモグラフィ (以下,MMG) 各々の検査法で検出し得なかった乳癌症例 (以下見落とし群) を比較検討した。病理学的に乳癌が確定した90例のうちPEの見落とし症例数は13例,USは7例,MMGは15例で,有病正診率はそれぞれPEが85.6%,USが92.2%,MMGが83.3%であった。
 二者併用診断として見ると,PE・US併用の検出率が95.6%,PE・MMG併用が97.8%であるのに対して,US・MMG併用が98.9%の検出率を示し最も効率が良かった。
 PEとMMG見落とし群は各々の検出群に比し有意に小腫瘤径乳癌が多いが,US見落とし群ではUS検出群に比して有意差を認めず,USの見落としは腫瘤の大小ではなく乳癌のUS画像診断上の問題であることが示唆された。PE見落とし群は全乳癌症例に比して有意に組織学的悪性度,浸潤度が低いにもかかわらずリンパ節転移症例が多く,なおかつそれらのリンパ節転移症例はいずれも0.8~0.9mmの小腫瘤径乳癌であり,非触知でも看過できないことが示唆された。
 現在,厚生労働省主導でPE・MMG検診が全国的に普及しつつあるが,必ずしもMMG万能ではなく見落としも多いので,効率の悪いPEを省いてUS・MMG検診を行なうべきである。

著者関連情報
© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
次の記事
feedback
Top