抄録
当科で経験した陰茎部外傷の2例につき報告した。症例1は64歳,男性。重度の糖尿病あり。喧嘩の際,股間を蹴られた5日後に当科を受診。陰茎包皮の広範な壊死と二次感染あり。症例2は80歳,男性。深部静脈血栓症にてワーファリン内服中。リハビリ目的の自転車漕ぎを通常の2倍の時間施行後,陰茎全面および陰嚢にかけ皮下出血あり。受傷一週間後に当科受診。両名とも合併症や年齢を考慮し保存的方法にて治療するも改善しないため,全身麻酔下でデブリドマンならびに分層植皮術を施行した。術後の経過は順調であり創部の修復状態も良好であった。陰茎部の植皮はシートグラフトが基本であるが,メッシュスキングラフトでも肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮を来さず,また最小の採皮で充分満足のいく陰茎部の創修復が可能であった。