2013 年 62 巻 2 号 p. 119-122
胆石は胆嚢癌の危険因子であるとの明確な根拠はないため,予防的胆嚢摘出術は推奨されていない。しかし,高齢化地域に位置する当院にて,胆石症の診断にて胆嚢摘出術を施行され,胆嚢癌合併を指摘された症例は1.99%あり,異形成を伴う症例も含めると3.31%で悪性所見が診られた。すなわち,高齢者の胆石症患者においては,従来考えられていたよりも高率に胆嚢癌が合併していることが示された。そのため,高齢者においては予防的な胆嚢摘出術の施行も検討されるべきではないかと思われた。特に,高齢化の進行する農村地域においては,がん患者の治療やその後の生活支援も含めて大きな制約が予想されるため,予防的治療の是非について更なる検討が必要と考えられた。