抄録
本研究は, 高齢者のコミュニティ感覚や近隣効果尺度等が心の健康と関連する要因であるかを検証することを目的とした。2011年8月~9月, A市老人クラブに所属する65歳以上の男女およびA市社会福祉協議会が実施する元気デイ参加者の65歳以上の男女の計820人を対象に, 無記名自記式質問紙調査を実施し, 全ての調査項目に有効な回答が得られた577人 (有効回答率70.4%) を分析対象とした。分析は単変量解析および多変量解析を行なった。その結果, 生活満足度と正の関連があった要因は「主観的健康感」「高血圧」「中学校区」「地域への愛着」「ソーシャルサポート」「現病歴なし」であり, 負の関連があった要因は「神経症性」「ストレス」であった。一方, 抑うつの危険因子となったのは「一人暮らし」「神経症性」「ストレス」であり, 改善因子となったのは「主観的健康感」「趣味活動」「美観」「社交性」であった。以上のことから, 高齢者の心の健康には,主観的健康感や性格特性等のさまざまな個人的要因とともに, コミュニティ感覚「地域への愛着」, 居住環境「美観」が関連することが明らかになった。高齢者が地域で健やかに生き生きと過ごすためには, 性格特性等の個人的要因を踏まえながら, 地域のつながりを深めるような支援や, 住み心地のよいコミュニティづくりを進めることが必要であると考える。