抄録
甲状腺ホルモンの合成, 分泌, 作用に関わる各種遺伝子の胚細胞レベルにおける遺伝子変異により, 甲状腺ホルモン濃度やその働きに様々な異常をきたすことが知られている。本論文ではそれらのうち, 甲状腺刺激ホルモン (TSH) 受容体異常症と甲状腺ホルモン不応症を取り上げ, 前者として, 30歳代女性でTSH受容体遺伝子の機能獲得型変異 (p.Asp617Tyr) が確認され非妊娠時は潜在性甲状腺亢進症の状態であるが妊娠後半に甲状腺中毒症が顕性化した症例, および後者として, 60歳代男性で不適切TSH分泌症候群にバセドウ病を合併し甲状腺ホルモン受容体β遺伝子変異 (Ala234Thr) が確認された症例のそれぞれについて報告する。