日本農村医学会雑誌
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研究報告
胆膵疾患診療におけるJA北海道厚生連内病病連携の有効性に関する検討(第2報)
栁川 伸幸武藤 瑞恵市來 一彦石川 千里武藤 桃太郎井上 充貴
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2016 年 65 巻 4 号 p. 809-815

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抄録

 中核都市と地方都市における医療環境には少なからず差があり,特に胆膵疾患に対する診療においては顕著であるのが現状である。そこで,胆膵領域の専門医が常駐していない医療機関に専門医を派遣することにより,地域の胆膵疾患診療レベルの向上の可能性と患者の負担軽減に関する検討を行なった。平成25年8月から平成27年3月までの間,旭川厚生病院(以下,旭川病院)の胆膵専門医が遠軽厚生病院(以下,遠軽病院)で,超音波内視鏡検査(EUS)及び経乳頭的処置を施行した患者68例(男性38例,女性30例,年齢中央値68歳)を対象とした。旭川病院の医師が施行したEUS症例は25例であり,経過観察例および手術例から検討した旭川病院医師の正診率は92.0%(23/25)であった。旭川病院医師が施行した経乳頭的処置症例は43例であり,その手技完遂率は88.4%(38/43)で,そのうち遠軽病院で手技を完遂できなかった症例に対する旭川病院医師の手技完遂率は75%(3/4)であった。同時期に遠軽病院から旭川病院に紹介された症例は14例で,内訳は手技不成功例が2例で,その他は患者の希望で検査を希望したり,さらなる精査が必要な症例であった。以上より,胆膵領域の専門医が存在しない医療施設に対して専門医を派遣することは,その地域の診療に十分寄与できるものと考えられた。さらに患者に対しては,負担を軽減するものであり,本研究で検討した病病連携は非常に有用なシステムであると考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本農村医学会
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