日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
研究報告
過疎地域における中小規模医療機関の看護現任教育体制の現状と課題
─A県国民健康保険診療施設への調査から─
岩渕 光子蘇武 彩加上林 美保子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 68 巻 5 号 p. 595-

詳細
抄録
 本研究は,限られた医療資源の中にある過疎地域の医療機関における看護現任教育体制の現状と課題を明らかにすることを目的とした。A県の国民健康保険診療施設29施設の看護部長を対象に,自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,回答施設の概要,看護職員の雇用状況及び看護部門の状況,人材育成の状況,看護管理や人材育成の課題,中小規模医療機関の施設間ネットワークである。
 18施設(病院5施設,診療所13施設)から回答が得られた。看護職員への教育方法は,「県や自治体が主催する研修会への参加」「外部機関または関連施設の研修」「OJT」の順で多く,院外教育が中心であった。院内教育を実施しない理由として「人員が確保できないこと」「看護職員の教育組織(委員会等)が設置されていない」ことが,また,院外教育へ派遣していない理由として「時間確保が困難」なことが最も多くあげられていた。人材育成の課題は【人材不足により人材育成が困難】【スタッフの意欲低下】があげられた。
 病院5施設をみると,既卒看護師の離職率は17.6%であった。また,看護職員の教育組織を設置している病院は3施設(60.0%)であり全国調査より低かった。過疎地域では就業経験のある多様な人材が採用されることから,その看護職の実践能力に合わせた学習機会を多施設とも協力して提供し,院外教育が院内教育と結びつけられるOJTを検討していく必要がある。
著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top