抄録
80歳代,女性。高血圧,脂質異常症,内痔核のため近医で処方を受けていたが,ADLは自立していた。また高度な便秘は無く,下剤の処方や浣腸・摘便の既往も無かった。2か月前から体調不良と食欲低下を認めた。3週間前から腰痛のため歩行困難となり,当院整形外科へ紹介された。腹痛や腹部膨満などの腹部症状は無かった。腹骨盤部CTで腰椎骨折は無く,骨盤内後腹膜や臀部,左鼠径部皮下に気腫像が認められ,肛門周囲の炎症が疑われたため当科紹介となった。下部直腸の後腹膜穿孔と診断し緊急で腹会陰式直腸切断術を施行し救命した。下部直腸穿孔は大腸穿孔の中で頻度が少なく,非外傷性のものはまれである。特に高齢者は非典型的な症状しかないこともあり,注意を要する。