日本農村医学会雑誌
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症例報告
長時間の家庭用電気掃除機使用後に右上肢と右胸部に皮下出血を来した高齢女性の1例
前田 学坂本 仁
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2022 年 70 巻 5 号 p. 510-514

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抄録
 87歳女性・無職,7月,自宅で昆虫(毛蠅)が大量に発生したため,4室を数時間以上連続して家庭用電気掃除機(日本製2013製造;キャニスター型)を使用し清掃した。その2日後に右手から上肢にかけて浮腫と紫斑を来し,当科を受診した。右手拇指球筋から前腕,上腕に著明な浮腫と尺骨側に帯状の紫斑を認めた。翌日右胸部に拡大したため,内科的な疾患を疑い,CT等で精査したが,異常を認めなかった。長時間右手で作業した結果,振動が筋肉を介して末梢血管障害を惹起して紫斑を生じたと考えられた。血液検査では筋原酵素(LDH;326U/L,CK401IU/L)は高値であった。
 振動レベルは60dBとチェーン・ソーの半分であるが,長時間の連続使用によりEU定義の1日8時間の等価振動加速度実効値2.5m/s2を超えたため,皮下出血が出現したと想定された。電気掃除機による皮膚障害の報告はなく,自験例が1例目の報告と思われる。
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© 2022 一般社団法人 日本農村医学会
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