日本農村医学会雑誌
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原著
  • 久田 祥雄, 杉岡 隆
    2022 年 71 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     医療機関を利用している農村地域居住者の孤独感が健康度に及ぼす影響について,個人の属性および生活習慣や人間関係と合わせて評価するため,中山間地域のへき地拠点病院と関連診療所利用者149人に対して質問紙調査を行なった。対象の属性として,性別・年齢・世帯状況・婚姻状態・収入・学歴・就労状況を,生活習慣として,肥満の有無・喫煙歴・飲酒習慣を測定した。孤独感の測定にはshort-form UCLA(3~9点)を用いた。人間関係は,現在の人との付き合いかたは自ら選んだかものであるかどうかを聴取した。健康度の評価には,WHO/DAS 2.0の12項目(0~48点)を用いた。有効回答の得られた108名で解析を行なった。男性47名,女性61名,平均年齢74.1歳,肥満30人,喫煙歴40人,飲酒習慣あり38人,UCLA得点平均4.08±1.34,WHO/DAS 2.0得点平均7.68±8.84,望んでいない人間関係と回答したのは5人であった。UCLA 4点以上58人を孤独あり,WHO/DAS 2.0得点7点以下66人を健康度が高いと定義し,孤独の有無と健康度で2群に分けて関連をみた。単変量解析では,孤独感が高いと健康度が有意に低くなった(オッズ比0.29,95%信頼区間0.11~0.72,p値0.003)。本検討を行なった集団では,高齢者,女性,独居世帯,離別・別居・死別者,義務教育までの教育歴,無職・離職状態,飲酒習慣なし,孤独ありのグループで健康度が有意に低かった。これらの要因で調整しても,孤独感が高いことで有意に健康度が低くなった(オッズ比0.11,95%信頼区間0.02~0.43,p値0.002)。
  • 木村 裕美, 古賀 佳代子, 久木原 博子, 西尾 美登里
    2022 年 71 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     本研究は,行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia以下,BPSD)出現時のストレスを明らかにし身体的・情緒的介入により快ストレスをもたらすケアの検証を目的とした。対象者は,S県内の介護老人福祉施設,グループホーム,小規模多機能型居宅介護,地域密着型特定施設の利用者で,BPSDが出現するアルツハイマー認知症高齢者57名である。コントロール期2週間,介入期12週間にスクエアステップ(SSE),バリデーション法によるコミュニケーションを実施した。結果,BPSD出現時にはストレスが高値であることが認められた。SSE後のアミラーゼ活性値は有意な差は認められなかったが,下降した者は7割に認められた。Face scale(以下,FS)評価でも有意に表情が改善した。バリデーション後のアミラーゼ活性値は有意に低下し効果が認められ,FS評価でも有意に表情が改善していた。本研究の対象者は後期高齢者であり認知症も中程度者が多かったが,SSEは身体活動の楽しみや仲間づくり,バリデーションでは時間を共有しストレスを和らげる効果が示唆された。
  • 大川 優子, 安部 義一, 鈴木 正義
    2022 年 71 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     起立性調節障害(OD:orthostatic dysregulation)は,自律神経系による循環調節不全が主要原因であり,心身症としての側面も強く不登校を伴うこともある。今回我々は,心身症としてのOD診断チェックリスト陽性OD患者のうち,不登校の原因とコロナ禍での問題点を調査した。期間は2020年4月1日から2021年10月31日に当院小児科外来を受診したOD患者67例を検討した。対象は平均年齢13.7±2.4歳,男20例:女47例であった。ODの各サブタイプの内訳は体位性頻脈症候群43例,遷延性起立性低血圧15例,起立直後性低血圧1例,起立直後性低血圧を伴う血管迷走神経性失神1例,他に従来の診断基準で陽性が7例あった。患者67例のうち,心身症としてのチェックリスト陽性が37例,不登校が22例であった。COVID-19(Coronavirus disease 2019)流行に伴い子供達の生活環境も一変し,変化に適応出来ず不登校になった症例や,体調不良を訴えると感染を疑われ,保健室で休養出来ず早退させられた症例もあった。また外出自粛による生活リズムの乱れや,運動不足も症状悪化の原因と考えられた。当院では自律神経調節機構の病態の説明や生活指導を患者本人や家族へ行ない,不登校の期間や心身状態の程度に応じて環境調整など学校と連携を取り,他医療機関の精神科と連携し心理療法を行なった。コロナ禍におけるOD患者を診察する上での問題点を考察した。
  • ─高知県土佐町のご長寿健診から─
    野瀬 光弘, 木村 友美, 坂本 龍太
    2022 年 71 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     高齢者を対象とした農作業と健康状態との結びつきに関する研究はこれまで行なわれてきたが,農作物の取り扱いはほとんど着目されてこなかった。本研究では,農作業や作物の取り扱い(譲渡の有無)と健康の関連を明らかにすることを目的とし,高知県土佐町で実施したご長寿健診の受診者を対象に調査を行なった。身体的,精神心理的,社会的側面を含めた高齢者総合機能評価項目について,農作業の有無による二群比較をt検定で,作物の譲渡の有無も加味した三群比較を一元配置分散分析及び多重比較で男女別に解析した。その結果,男性において,農作業をしている人は農作業をしていない人に比べ,東京老研式活動能力指標における社会的役割などが有意に高く,歩行と立ち上がりの能力を示す指標などが有意に良好だった。女性は両者で有意差のある項目はなかった。農作業の有無に作物の譲渡の有無も加えた三群比較を行なうと,男女ともに農作業を行ないかつ作物を譲渡している人は,農作業を行ないかつ作物を譲渡していない人に比べてそれぞれ有意に主観的幸福度,社会的役割が高かった。
研究報告
  • 脇坂 里奈, 古市 千奈里, 福岡 秀人, 樋口 昌哉, 栁町 ちひろ, 左右田 昌彦, 宮田 栄三, 三浦 学
    2022 年 71 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     心臓超音波検査において,壁運動評価は目視による主観的評価を必要とするため,検者間で差が生じやすいと言われている。心臓超音波検査に従事する臨床検査技師を対象に経験年数の多寡により2群に分け,保存動画から得られた心エコー図における左室壁運動評価をスコア化して比較した。経験が多い群ではスコアに技師間の違いを認めなかったが,少ない群では有意に違いが認められ,3か月間のトレーニングにより違いを認めなくなった。経験の浅い技師でもトレーニングによって比較的短期間で平準化を期待できることが示唆された。
症例報告
  • 前田 孝, 小林 聡, 高木 健裕, 駒屋 憲一, 加藤 真司, 坂野 福奈, 堀 明洋
    2022 年 71 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     症例は57歳の男性。腹痛,嘔吐を主訴に腸閉塞で紹介となった。CTで骨盤部の小腸に拡張を認め,癒着性腸閉塞の診断で入院となった。既往に胆管癌があり,受診の4か月前に膵頭十二指腸切除を受けていた。
     入院後は絶食で経過観察した。第3病日に腹痛の増悪を認め,CTを再検したところ,上腸間膜動脈の背側で小腸間膜が絞扼された所見を認め,右上腹部に脱出した小腸はclosed loopを形成していた。内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。手術所見としては,旧Treitz靭帯部に形成された結腸間膜と腹膜の間隙がヘルニア門となり,約2m程度の小腸が右上腹部に向かって脱出していた。腸管を整復し,ヘルニア門を縫合閉鎖した。術後経過は良好であった。
     膵頭十二指腸切除後の内ヘルニアに関する報告例は稀である。一方で,本術式は複雑な再建経路が影響し,様々な内ヘルニアを起こし得ると考えられる。他の報告例を踏まえ,文献的な考察を加えて報告する。
  • 横井 碧, 中村 蓉子, 石井 卓
    2022 年 71 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     血管輪は大動脈が気管や食道を取り囲み,圧迫する先天異常である.先天性心疾患の1〜2%と頻度は低いが,啼泣や哺乳に伴い致命的な呼吸不全を来す可能性があり,吸気性喘鳴の鑑別として重要な疾患の1つである。
     症例は生下時より吸気性喘鳴を認め,軽度の喉頭軟化症の疑いとして経過観察されていた。生後5か月時にチアノーゼとあえぎ呼吸が先行する無熱性痙攣を来たし,救急搬送された。頭部CTと脳波からは,頭蓋内の器質的疾患やてんかんは否定的であった。単純胸部CTで下部気管の狭窄と右側大動脈弓が疑われ,造影CTで血管輪の診断に至った。血管輪による気道狭窄のために低酸素発作を生じ,痙攣を来したものと考えた。
     吸気性喘鳴を呈する症例では血管輪を鑑別に挙げ,心エコーや造影CTなどの精査を行なう必要がある。本症例の経過につき,文献的考察を交えて報告する。
  • 石谷 紗希, 久留宮 康浩
    2022 年 71 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     症例は39歳の女性で,直腸癌,Rab,cStageⅢbに対し術前化学療法施行後に腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。術前化学療法前後のCT,MRI,術中所見,いずれも腹水および両側付属器に異常所見を認めず,切除標本の病理組織学的所見はypT3,ypN1b,ypStageⅢbであった。術後2か月,補助化学療法中に腹部膨満を自覚,精査で両側卵巣腫大および胸腹水を認め,診断治療目的に両側付属器摘出術を施行した。術中所見で腹膜播種は認めず,病理組織学的所見は直腸癌の両側卵巣転移再発であった。術後胸腹水は消失し再貯留を認めなかったことから,本症例はpseudo-Meigs症候群と考えられた。術後補助療法を1年間施行し,付属器摘出から1年6か月経過した現在,再発所見を認めず経過観察中である。
  • 久留宮 康浩, 丹羽 多恵, 大西 桜, 雄谷 慎吾, 水野 敬輔, 世古口 英, 菅原 元, 井上 昌也, 加藤 健宏, 秋田 直宏, 南 ...
    2022 年 71 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     66歳,閉経後女性。主訴は検診異常。検診異常を指摘され当院を受診した。左乳房の外上部に3 cm大の腫瘤を触れた。太針生検で浸潤性乳管癌:腺管形成型,ER(Allred score TS(total score)3=PS(proportion score)2+IS(intensity score)1),PgR(Allred score TS 3=PS 2+IS 1),HER2蛋白(2+),FISH(fluorescent in situ hybridization)法によるHER2遺伝子シグナル比:1.1(陰性),Ki67 Labeling Index 15%であった。画像上でのサイズは35mmであった。T2N0M0 StageⅡA,Luminal B-like乳癌と判断し,まず術前ホルモン療法としてLetrozole 2.5mg/日を開始した。Letrozoleを2か月投与したが,サイズは44mmとむしろ増大した。術前ホルモン療法は2か月で中止とし,術前化学療法(EC療法を4コース,DOC療法を4コース)を行なったところサイズは認識されないまでに縮小した。これらの術前治療の後,乳頭温存乳房全切除,センチネルリンパ節生検および拡大広背筋皮弁による一次一期乳房再建を行なった。術後3年6か月,無再発生存中である。本症例の様なLuminal B-like乳癌に対し術前ホルモン療法を施行し,そのresponseによって術前化学療法を行なうのも選択肢であろう。
  • 大石 愛奈, 髙橋 慎治
    2022 年 71 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/23
    ジャーナル フリー
     患者は36歳女性。冷え性であり,また口唇ヘルペスを繰り返していた。平均睡眠時間が13時間で,睡眠時間確保困難時には日常生活に支障が出るため他院睡眠外来を受診,長時間睡眠者と診断された。35歳で第1子出産。産後1か月にも口唇ヘルペスが出現し,悪露が3か月間継続した。36歳で第2子出産。第1子出産後と同様,産後に繰り返し口唇ヘルペスが出現し,悪露流出も継続していた。診察では腹部緊張は軟弱で,易疲労性,易感染性であることから気虚と診断し補中益気湯内服開始とした。2週間後に悪露が減少し繰り返し出現していた口唇ヘルペスが出現しなくなった。また気虚症状改善に伴い,5時間ほどの睡眠で日中眠気を感じることはなく体力維持できるようになり長時間睡眠の治療にも繋がった。本症例のように気虚に対して使用されることが多い補中益気湯が,気虚関連症状の改善とともに長時間睡眠者の睡眠時間短縮により,生活改善に寄与する可能性がある。
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