抄録
66歳,閉経後女性。主訴は検診異常。検診異常を指摘され当院を受診した。左乳房の外上部に3 cm大の腫瘤を触れた。太針生検で浸潤性乳管癌:腺管形成型,ER(Allred score TS(total score)3=PS(proportion score)2+IS(intensity score)1),PgR(Allred score TS 3=PS 2+IS 1),HER2蛋白(2+),FISH(fluorescent in situ hybridization)法によるHER2遺伝子シグナル比:1.1(陰性),Ki67 Labeling Index 15%であった。画像上でのサイズは35mmであった。T2N0M0 StageⅡA,Luminal B-like乳癌と判断し,まず術前ホルモン療法としてLetrozole 2.5mg/日を開始した。Letrozoleを2か月投与したが,サイズは44mmとむしろ増大した。術前ホルモン療法は2か月で中止とし,術前化学療法(EC療法を4コース,DOC療法を4コース)を行なったところサイズは認識されないまでに縮小した。これらの術前治療の後,乳頭温存乳房全切除,センチネルリンパ節生検および拡大広背筋皮弁による一次一期乳房再建を行なった。術後3年6か月,無再発生存中である。本症例の様なLuminal B-like乳癌に対し術前ホルモン療法を施行し,そのresponseによって術前化学療法を行なうのも選択肢であろう。