日本農村医学会雑誌
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72 巻, 1 号
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原著
  • 谷田部 菜月, 北野 理絵, 鍔田 芙実子, 金子 志保, 武内 史緒, 寺本 有里, 松岡 竜也, 市川 麻以子, 遠藤 誠一, 坂本 雅 ...
    2023 年 72 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー
    【緒言】癒着胎盤は産科危機的出血を来しうる疾患である。管理方法は統一されておらず症例に応じた対応が必要である。今回,当院での癒着胎盤症例について検討した。
    【方法】2014年1月から2021年11月までに当院で経験した癒着胎盤35症例を後方視的に検討した。
    【結果】分娩時の母体年齢は中央値37歳(21~43歳)であり,8例が体外受精による妊娠であった。15例が前置胎盤と診断されており,12例に帝王切開の既往,1例に癒着胎盤の既往があった(重複あり)。分娩時期は中央値36週(26~41週)であり,分娩方法は20例が帝王切開術,15例が経腟分娩であった。出血量は中央値2,970mL(300~14,727mL)であった。35例のうち9例は用手剥離にて胎盤を娩出したが,うち1例で再出血のため単純子宮全摘術を施行した。11例で妊娠子宮摘出術,2例で子宮内容除去術を行なった。また,13例で保存療法を行なったが,うち3例で出血や感染を併発し,それぞれ子宮内容除去術,胎盤核出術,子宮全摘術を施行した。
    【考察】分娩前に癒着の程度が強いと予想された4例は妊娠子宮摘出術を施行し,再出血を認めた1例を除いて出血量を抑えることができた。また,胎盤の一部が残存した13例に保存療法を施行し,10例で胎盤が自然に娩出され,12例で子宮を温存することができた。
    【結論】分娩前から癒着の程度が強いと予想される症例において,分娩時に胎盤が剥離されない場合は妊娠子宮摘出術が検討される。また,一部の胎盤のみ残存する症例では保存療法が良い適応となるが,経過観察中に出血や感染が増悪した場合は子宮全摘術などの外科的介入を検討する必要があり,患者にもその旨を説明しておく必要がある。
研究報告
  • 前田 学
    2023 年 72 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー
     2015年4月より2021年10月末までに当院を受診した蜂刺症223例(男105,女118例;延べ234件,44.6±21.8歳;7~97歳)を検討した。蜂刺症は各年平均30件前後で,降雨量の少ない2016年は通年の約2倍多く,降雨量の多い2020年は半減した。発症月は8月が最多で,受傷時間は午前中が過半数を占めた。刺傷個所は1個所が最多で,刺傷部位は手,上肢,頭部,顔面,下肢,躯幹,足,頚部の順に多く,露出部に目立った。臨床像は紅斑・腫脹が最多で,次に刺傷部点状出血,紫斑,水疱・びらん(潰瘍)合併の順に多かった。全身症状は延べ19件(8.1%)に認め,口・喉の違和感,掻痒,蕁麻疹,易疲労感などが目立った。背景因子に皮膚アレルギーを有する群(36例)と有しない群(107例)の重症例は各々19例と36例であることより,前者は有意に重症例が多かった(p=0.04)。治療は,副腎皮質ホルモン外用薬と抗アレルギー薬内服を主体に重症例にはビスコクラウリン・アルカロイド(セファランチン®)点滴(20~30mg)と柴苓湯2~3包/日内服の併用が有用であった。
  • 那須 紫文, 本宮 真, 渡辺 直也, 山本 和洋, 梶 颯斗, 小石 永, 安井 啓悟, 小川 基
    2023 年 72 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー
     自営農家の手指部・手部・肘部の外傷(以下,手外科外傷)患者の治療に際して,治療だけでなく家業の継続に関しても配慮する必要がある。本研究では手外科外傷のため当院整形外科で手術治療が実施され,術後にリハビリテーション処方がなされた自営農家56名を対象に,職業復職状況を調査した。8割を超える49例が現職復帰を果たしていたが,その多くが農繁期に機能障害を有したまま復職していた。医療従事者は機能障害の程度にかかわらず農期に合わせて復職する自営農家の手外科外傷患者の傾向を認識し,治療だけでなく復職支援にも配慮することが重要と考える。そのため,医療従事者も農期ごとの作業工程・作業内容を把握し,障害を有した状態での復職が可能となるよう,患者ごとに個別の対処を検討する必要がある。また,2期的機能再建など複数回にわたる治療を要する場合は,一度現職復帰した後の農閑期に実施するなど,農期を踏まえた計画を検討することも重要である。
症例報告
  • 中津 若菜, 西平 茂樹
    2023 年 72 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー
     症例は60歳男性。5年ほど前から間欠的な嗄声を自覚していた。1年前から嗄声の増悪を認めたため当科を紹介受診した。左声帯に広基性の腫瘤を認め,全身麻酔下に直達喉頭鏡を用いて摘出した。術後病理診断は粘液腫であった。粘液腫は軟部組織を起源とする良性腫瘍である。喉頭に発生する粘液腫は非常に稀であり,現在までに発表された症例は20例に満たない。良性腫瘍であるが,発生場所によっては高率な再発率が指摘されている。手術の際には取り残しのないよう注意が必要であるとともに術後2~3年程度の経過観察が必要な疾患である。
  • 仲野 宏, 叶多 諒, 金澤 匡司
    2023 年 72 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー
     症例は75歳男性。進行直腸癌に対して,化学療法後にconversion手術として直腸切断術とリンパ節郭清術を施行した。しかし,側方リンパ節転移部が内腸骨血管系に浸潤しており,切除不能と判断し術後も化学療法を継続した。腫瘍マーカーの上昇や肺転移の出現もあり,3次治療となるS-1+Irinotecan+Bevacizumab併用療法に移行したが,その3コース目day22に腹痛,嘔吐が出現し,当院へ救急搬送された。造影CT検査で癒着性腸閉塞の診断で,化学療法を中止し,保存的加療の方針で入院とした。入院後に不穏行動がみられ,第3病日に複視症状も出現したため頭部MRI検査を施行したところ,後頭葉を中心にT2 FLAIR像で高信号部を認めた。対症療法にて神経症状,画像所見の改善を認めたため,可逆性後頭葉白質脳症と診断した。
     本疾患は化学療法,子癇,敗血症,腎障害や自己免疫性疾患などに関連して発症するとされるが,まれな疾患であり,文献的考察を加え報告する。
地方会
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