抄録
症例は50歳代女性,子宮筋腫に対し腹式単純子宮全摘出術を施行した。経過良好のため術後6日目に退院したが,術後11日目に発熱と腹痛を主訴に外来受診した。来院時血液検査でCRP 22.95mg/dL,WBC 21,300/μLと炎症反応が上昇し,経腟超音波検査と造影CT検査で少量の腹水と骨盤腹膜の肥厚を認めたため,骨盤腹膜炎の診断で再入院した。入院後,抗菌薬としてCMZで治療開始したが改善なく,術後13日(再入院3日)目に経腟超音波検査で骨盤内膿瘍を認めた。経腟超音波ガイド下で膿瘍穿刺し穿刺液を細菌培養検査に提出後,CTガイド下ドレナージを施行した。同時に,抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:以下AST)よりMycoplasma hominis(以下M. hominis)感染を考慮するよう示唆があり,抗菌薬をSBT/ABPCとDOXYに変更した。術後18日(再入院8日)目に膿瘍の穿刺液細菌培養からM. hominisが検出された。その後,自他覚症状の改善と膿瘍腔の縮小を認め,術後21日(再入院11日)目に退院した。M. hominisは泌尿生殖器の常在菌であるが,術後から発症までの経過が長く,βラクタム系抗菌薬が無効の骨盤内膿瘍を認めた場合,起炎菌として本菌を考慮した治療を検討することが重要である。