抄録
70歳代,男性。慢性腎臓病急性増悪のため当院へ救急搬送された。来院時より幻視を示唆する訴えを認めたが,認知機能の低下によるものと考えられていた。入院後の持参薬鑑別にて,他院処方のアマンタジン100mg/日を常用していたことが判明し,同剤の過量投与が幻視の原因であると考え,投与を中止した。抗パーキンソン病薬は本来であれば悪性症候群のリスクを回避するために漸減すべき薬剤である。しかし,薬物動態学的特性から,アマンタジンは重度腎機能障害時には漸減せずに中止した場合でも血中濃度が緩徐に低下すると考えられたため,本症例では漸減することなく中止した。中止後もCK 値の上昇や筋硬直などは認められず,中止後7日目には幻視が改善した。アマンタジンを使用している症例の対応に当たる際には,患者の状態および腎機能を評価しながら適切な投与設計に積極的に携わっていくことが重要であると考えられた。