日本農村医学会雑誌
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研究報告
術後せん妄の発生状況とリスク因子の検討
矢野 由香久我 貴之重田 匡利池下 貴広升井 規晴
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2025 年 74 巻 1 号 p. 19-24

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抄録
 術後せん妄は手術後に見当識障害や妄想・幻覚などに関連した異常行動を呈する精神状態である。術前にせん妄発症のリスクを評価し,術後のせん妄症状とその対応について検討したので報告する。対象は2022年11月~2023年4月に全身麻酔手術を受けた患者71例。評価にはDELTAプログラムせん妄アセスメントシートを用い,入院時に準備因子を評価し1つでも該当すればハイリスクとしてせん妄症状のチェックを行なった。全身麻酔は準備因子の1つであるため71例全例せん妄ハイリスクであった。術後,症状が1つでもあればせん妄対応とし促進因子を評価,治療を行なった。術後せん妄症状を有した症例は17例であった。術後せん妄症状あり(Y群),なし(N群)に分け準備因子について検討した。Y群は70歳以上,脳器質的障害あり,認知症併存が有意に多かった。Y群の平均年齢は78.5歳,N群69.4歳と有意に高齢であった。両群間で手術時間,麻酔時間,出血量,輸血量などに有意差は認めなかった。Y群のせん妄症状は注意力の欠如15例,思考の解体8例,意識レベルの変容6例。対応として抑制15例,抗精神薬投与10例,睡眠薬投与4例。モニターやカテーテルなどの早期除去と昼夜逆転を防ぐためのリハビリテーション早期導入を全例で行なった。70歳以上,脳器質的障害を有する手術患者では特に術後せん妄発症に留意すべきと考える。準備因子を特定し,術前にせん妄発症のリスクを評価することで早期介入が可能である。
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© 2025 一般社団法人 日本農村医学会
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