抄録
悪性胸水とは,胸膜播種や腫瘍の浸潤など,癌が原因となって胸腔内に液体が貯留した病態である。原因となる腫瘍は肺癌,乳癌,卵巣癌,悪性リンパ腫が大半を占める。尿路上皮癌が原因となる悪性胸水は稀であり,細胞診検査において鑑別に苦慮する。今回尿路上皮癌が胸水に出現した症例を経験したので報告する。症例は80歳代男性。右背部痛を主訴に受診し,精査の結果,尿管癌と診断された。治療経過中に片側胸水を認め,悪性胸水疑いで細胞診検査,ならびに組織診検査が施行された。細胞診検査では不整腫大核を有する類円形の異型細胞が多数観察された。同時に作成したセルブロック組織診では免疫組織学的検討を経て,尿路上皮癌と診断された。
体腔液における細胞診検査においては原発巣の推定まで求められることがある。細胞所見のみに留まらず,臨床所見や既往歴などを考慮し,多角的なアプローチをもって細胞選別を慎重に行なうことが肝要である。