1985 年 34 巻 1 号 p. 21-33
広島湾内の「カキ」養殖従事者の健康状態を調査し, 労働条件・生活・行動・食事などと健康状態の関連について検討した。
「カキ」養殖従事者の生活労働条件はかなり過酷であり、とくに男性において目立った。摂取食品は労働に応じ, 摂取量は多く, 動物性食品も多いようであった。このような条件下にある「カキ」養殖従事者の健康状態で問題になるのは男性では肥満傾向, 高血圧, 高脂血症であり, 女性では肥満傾向のみであった。しかし男女とも動脈硬化性血管障害危険因子を有するものは50%以上みられ, これらに対する対策を今より実施しないと将来問題が起こらないとは断言できないと考えられた。その対策としては, 健康教育の徹底, 個人指導の強化などが必要であり, 決して楽観すべきではないと考えられる。このような健康管理が実施されてはじめて「カキ」養殖従事者の健康状態は, 現在以上に良好な状態に保つことが可能となり, その生産性の向上も期待できるものと思われる。