明らかな感覚障害のない脳血管障害患者の体性感覚刺激によるP300を分析し,脳血管障害病変が体性感覚認知にどのような影響を与えているかを検討した.健常者群に対し,再現性,慣れ現象による振幅の減衰,頭皮上電位分布,刺激側による差を検討したうえで,患者群における刺激側による差を検討した.健常者群においてP300は慣れ現象は認めず,頭頂部中心に広く分布し,刺激側で差を認めなかった.患者群の患側刺激と健常者群の同側刺激を比較すると,左片麻痺群,右片麻痺群ともに潜時が延長し,さらに左片麻痺群では健側刺激より患側刺激のほうが潜時が延長していた.以上から,脳血管障害が体性感覚認知に影響を与え,さらに病巣側によってその過程に何らかの違いがあると考えられた.