1996 年 33 巻 3 号 p. 182-187
右利き健常成人20名を対象に,右書きと左書きの書字動作を比較解析し,運動学習の観点に立った考察をした.書字はディジタイザー上で1×1,5×5,15×15cmの3つの升に平仮名「あ」を左右の手で交互におのおの10回ずつさせた.6つの運動学的指標と6つの形態的指標を算出し,これらから右書字と左書字の判別分析を行った.その結果,書字は小さいほど,判別関数による左右判別率は高く,視覚評価による判別率をしのいだ.運動学的指標として加速度の変動成分,形態的指標として各被験者の平均字体からのズレの変動成分が判別に特に寄与した.通常用いられる小さい書字に対する日常の学習効果が左右の書字の差を際立たせたと考えられた.