The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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原著
抗NMDA受容体脳炎の記憶障害に対するリハビリテーション
浦上 裕子山里 道彦白岩 伸子飛松 好子
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2016 年 53 巻 1 号 p. 75-87

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抄録
 抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎患者6名の記憶障害の回復の経過,予後からリハビリテーション(以下,リハ)を考察する.対象は当院でリハを行った6名(男1名,女5名,年齢20~47歳)である.女性患者5名は卵巣奇形腫を摘出,6名のリハ開始時のリバーミード行動記憶検査では,標準プロフィル平均16.7,2名は展望記憶(存在想起,内容想起)には障害を認めず,2名は経過で改善した.ウエクスラー記憶検査の5項目はリハ終了時に有意に改善しており,ヘルペス脳炎と比べて回復は良好であった.発症から平均4.5カ月でリハを行った4名は平均4カ月で認知機能の改善を認め,就労,復学,在宅自立に至った.発症から治療まで6カ月以上経過した2名は,記銘力や,展望記憶の障害が慢性期にも残存し,代償手段や就労支援を必要とした.
 回復期リハによる記憶障害の予後は良好な場合が多い.慢性期に残存する記銘力障害には,保たれている展望記憶や遂行機能を活用して就労支援と連携して介入することが重要である.
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© 2016 社団法人 日本リハビリテーション医学会
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