目的:高齢者用社会的診断手法の開発のため,余命と生活の質(QOL)の影響要因を探索した.
方法:2007年に長野県Y村全住民の心身機能・生活状況・QOL・低栄養リスクの実態を調査した.2014年に前調査時65歳以上であった高齢者に追跡調査を実施し,余命とQOLに影響する要因を追究した.
結果:余命に最も影響する要因は,心身機能的側面では男女とも年齢で,社会・経済的側面では,男性は「外出方法(自動車の運転の有無)」,女性は「普段の過ごし方(寝たり起きたりかどうか)」であった.身体的QOLに最も影響する要因は,男性は日常生活活動(ADL)の変化,女性は年齢であった.精神的QOLに最も影響する要因は,男性は外出頻度,女性はADLの変化であった.
結論:余命に影響する要因はQOLのそれと一致せず,長寿とQOLの維持・向上とは必ずしもつながらないことが示唆された.また,影響する要因には性差があった.QOLの維持・向上には,ADLを維持し,個人のライフスタイルを継続する支援が重要である.