2017 年 54 巻 2 号 p. 102-110
大腿骨頚部・転子部骨折の周術期には,誤嚥性肺炎の合併,胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)の併存,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)に注意が必要である.誤嚥性肺炎は,口腔ケアにより減少できる.また,高齢者は歯の喪失,義歯不適合による咬合不全も合併していることが多い.食事に関しては,嗜好の問題による低栄養も多い.虚弱な高齢者の食欲低下には,免疫力,生体の抵抗力を高める補中益気湯,六君子湯などの漢方薬が有用であり,誤嚥性肺炎の予防に,半夏厚朴湯が有効である.周術期に注意すべき合併症の自験例を提示した.周術期の全身管理を適切に行い,合併症を予防し,予後の改善に努めることが整形外科医に求められている.