「協調運動」は,相互に調整を保って活動する複数の筋によって遂行される滑らかで正確な運動である.協調運動に小脳が重要な役割を果たしていることは,動物の破壊実験などから推測されていた.小脳には,①バランスのとれた興奮性と抑制性の神経結合,②苔状線維と登上線維という2種類の入力と,可塑的な変化が可能なシナプス結合,③大脳小脳間のループ結合,脊髄・脳幹からの体性感覚・前庭感覚の入力と運動ニューロンに向かう出力,などの機能的構造,が存在している.このような神経回路によって情報科学/制御工学的な視点から示唆される内部モデルによる運動の協調的制御が小脳で行われていると考えられる.