2021 年 58 巻 2 号 p. 121-127
歩行運動において,正常と異常を区別する閾値の設定は非常に難しい問題である.一般に正常歩行は,健常者の歩行運動を基準とし,そこからの偏位として定義づけられることが多い.しかし,健常者の歩行にも幅があり,一概に正しい歩行のあり方を決めることは難しい.理論的に正常歩行とは効率的な倒立振子運動を形成し,両脚支持期の床反力を適切に制御されている状態である.この運動の効率のよい形成のためには,limb kinematicsの調整が鍵となる.Limb kinematicsの制御が適切に行われている状態を正常歩行であるとすることで,より臨床的な正常歩行の定義が可能になるかもしれない.