抄録
サルコペニアは外科術後感染症,急性期病院入院後の院内感染,高齢者の市中肺炎,敗血症の
予後悪化,HIV 感染,結核,COVID- 19 の重症化などに関連することが臨床的に認められてい
る。また,慢性腎臓病でも感染症の発症や予後との関連が示唆される。サルコペニアは,免疫能
低下,栄養状態不良,活動性低下,代謝ストレス,嚥下機能の低下などを介してこれらの感染症
のリスクとなる。サルコペニアにおける免疫能低下には,筋肉から分泌されるマイオカインなど
をはじめ免疫システムに関与していることが要因である。一方,感染症は,蛋白異化が亢進し,
サルコペニアをきたす。
一般に,サルコペニアの治療法は栄養介入と運動療法である。術後感染症に関しては,周術期
栄養・リハビリテーション介入が有効である可能性がある。栄養介入としては,十分なたんぱく
質とエネルギーを確保することが勧められる。⾼侵襲が加わった重症患者に対する早期リハビリ
テーションや早期経腸栄養も有用である。