抄録
高齢者において高頻度にみられる,骨粗鬆症とサルコペニアは合併していることも多く,オス
テオサルコペニアと呼ばれている。このオステオサルコペニアは,運動機能の低下,転倒や骨折
のリスク因子となり,さらに生命予後とも関連している。骨粗鬆症とサルコペニアが合併しやす
い機序としては,遺伝的要因や生活習慣に加え,骨と筋肉の両方に影響をおよぼす慢性炎症やイ
ンスリン/ インスリン様成長因子- 1 などの関与が考えられる。また,筋肉からはマイオカイン
と呼ばれる生理活性物質が産生されているが,筋肉に対して抑制的に作用しているマイオカイン
であるマイオスタチンは骨形成を抑制し骨吸収を促進する。イリシンやβ-aminoisobutyric acid
といったマイオカインも骨に対して作用を有している。反対に,骨から産生されるオステオカイ
ンであるオステオカルシンやスクレロスチンなどは,筋肉に対しても作用を有している。このよ
うに,骨と筋肉はさまざまな要因により強く関連し合っている可能性が考えられている。