抄録
サルコペニアは高齢期にみられる骨格筋量と筋力の低下であり,その有病率はCKD 患者,と
りわけ透析患者で高い。活動性や食事摂取の低下,負のタンパクバランス,代謝性アシドーシ
ス,慢性炎症状態などの多くの要因が関与し,全原因死亡や心血管死,各種循環器疾患のリスク
と相関する。その発症予防・治療にはレジスタンス運動や有酸素運動などの包括的運動療法の
他,栄養療法を組み合わせた複合介入が重要である。一方で新規薬物療法への期待も高まりつつ
あり,現行のCKD 治療の一部であるRAS 阻害薬の使用や腸管由来尿毒症物質の抑制,貧血・
低酸素の改善などによってサルコペニアの改善がもたらされることを示唆するいくつかの基礎研
究や観察研究が存在する。さらには近年腎保護効果が相次いで報告されているSGLT 2 阻害薬に
ついてもサルコペニアリスクを評価する臨床試験が進行中である。