抄録
慢性腎臓病(CKD)とは,腎障害が3 カ月以上継続した状態と定義される。加齢に伴う腎機能
の低下が糖尿病や高血圧などの腎合併症をきたす生活習慣病によって加速されることで顕在化す
る場合が多い。したがって,糖尿病や高血圧の治療がCKD の治療の基本となる。しかし,最近
の糖尿病や高血圧の治療薬の飛躍的な進歩にもかかわらず,高齢社会の進行とともにCKD 患者
の数は増え続け,わが国では成人の5 人に1 人が患う国民病となった。この事実は,老化現象の
一環として起きる腎機能低下の制御が喫緊の課題であることを示している。筆者らは,脊椎動物
に特異的な老化加速因子としてリンを同定した。本稿では,リン代謝の視点からCKD の病態生
理を理解することでみえてきたCKD の新たな治療戦略について議論する。なお,リンは生体内
ではリン酸として存在するので,特に断らない限り,本稿ではリンとリン酸を同義に使用する。