抄録
ヒト肺胞マクロファージ (AM) を用いてAMのアラキドン酸代謝について, in vitro で検討した. 14C-アラキドン酸のAM脂質へのとり込みパターンは, 喫煙により変動していなかった. 次に zymosan で刺激したAMによるアラキドン酸代謝物の放出能について検討した. まずAMのTXA2放出能を, 1) TXB2量を radioimmunoassay 法で直接測定する方法と, 2) 14C-アラキドン酸で標識したAMから放出されるTXB2分画の放射能をAMにとり込まれた全放射能の%で判定する方法の2法で測定したところ, 両者の結果の間に有意の正の相関がみられた. そこで, 2) の方法でAMのアラキドン酸代謝物放出能を測定した. その結果, ヒトAMの細胞当りの cyclooxygenase product (PGE2 やTXA2)や, lipoxygenase product の放出能は喫煙により低下していた. しかし喫煙によりAM数が増加しており, 気管支肺胞洗浄液中の総AM当りのアラキドン酸代謝物の放出量は喫煙でむしろ増加していた.