抄録
肺癌の癌性空洞内にアスペルギルスが認められた1症例を経験した. 症例は64歳男性で右S6の空洞性肺癌にて右下葉切除を行った. 切除標本ではいわゆる mural nodule を認め嚢胞発生肺癌が疑われた. 組織学的には, 嚢胞壁の全周に adenocarcinoma を認め縦隔リンパ節転移も認めたが, 空洞内よりアルペルギルスが発見された. 癌性空洞内アスペルギルス感染の本邦報告例は本例を含めて6例であり, その内3例が術前に fungus ball を認めたため, 抗アスペルギルス療法のみが施行され, 癌の合併の発見が遅れており簡単に真菌症のみの病変と考えるのは危険である. 感染の機序は不明ではあるが, 本例は既存の嚢胞から肺癌が発生したと考えられ, 感染に必要な場と時間が充分あったと思われた.